2018年12月号

理士 白井 清一

相続税と贈与の持ち戻し計算

 相続で遺言書がある場合に、遺留分の計算における持ち戻し計算についての民法改正が知られるようになったせいか、次のような質問が何人かの人から寄せられました。
10年以内の贈与はすべて相続税で持ち戻し計算の対象になるので、相続対策として毎年贈与をしてきたのが無駄になるのですか?」
 これは、税金のことを常日頃から考えておられる方が、民法と税法を混同し相続税法も一緒に改正されたと思われた結果だと考えられます。
 今回は、この民法の改正と相続税について、誤解がされないようにお話をさせて頂きたいと思います。
 まず、法律(民法などの相続に関する関係法律)と税法(相続税法)とを区別して考えないといけないということです。
 税金は、まず法律に従い相続の手続き(財産分け)を行い、その結果に税法を当てはめて相続税や贈与税の計算をします。
 相続が発生し、相続人の内の特定の人に遺言で多くの財産が取得されたとき、遺留分の侵害を受けた人は多く財産を取得した人(遺留分を侵害した人)に侵害額を請求することができるわけですが、この時に遺留分の計算の基になる額は、遺産として現存する財産に、原則として相続人に対して行われた10年以内の贈与を持ち戻して遺留分の額を計算します。
ただし、相続税の計算では、この持ち戻し計算が行われるのは相続開始前3年以内の贈与だけです。
これが遺留分の持ち戻し計算と相続税の持ち戻し計算の内容の相違点です。
 つまり、今現在、相続税法の改正はありませんので、相続税の計算では、相続の時に持ち戻される贈与は相続によって財産を取得した人に対する相続開始前3年以内のものに限定されます。
 この贈与の持ち戻し計算の対象者は、相続により財産を取得した人ですから、生前に多額の贈与を受けていても、相続で財産を取得しなければ持ち戻し計算の対象とはされません。

税理士 中山 吉晴

日本企業品質不正の訳とは?

いよいよ平成最後の12月となりました。
新しい年号になっても、本年以上のご厚誼をお願い申し上げます。

11月11日(日)の日経新聞の一面トップに次のような内容の記事が載っていました。
日本企業の品質検査不正が止まらないのには、共通した原因がある。
不正各社の報告書には、
検査工場の老朽化(スバル1960年代、日産1977年など)、
②売上の海外割合が6割、7割と増えるたびに新規投資が海外中心になり、国内は改修止まりであった、
人へも投資されず、リストラで減る一方であった、
④効率が悪い工場は閉鎖になってしまうために、生産能力を高く見せる必要があった、
など共通した問題点があった。
つまり、モノにもヒトにも投資せず老朽化し、最新設備の外国工場に太刀打ちできなくなってしまった。そのために不正をしてでも効率が良いふりをせざるを得なかった、というわけです。

これは中小企業が陥りやすい構図で、気が付いたときは手遅れであることが、ほとんどです。
開店の時から全く変わっていない店舗、耐用年数を大幅に超えた機械しかない工場、新人が入らないため全員が高年齢の会社、メニューが全く変わらない飲食店など、投資をしてこなかったため、会社が新陳代謝せず、老朽化している中小企業は、たくさんあります。

少しづつでも投資を続け、何年かに1回は大きく設備や人員に資金を投入することが必要です。
そのためには、利益がなければならず、むだな支出は避けて、少しでも多くの利益、資金を獲得すべきです。
前回で書きましたように、「利益とは成長のための投資財源であり、危機の備え」なのですから。

大きな投資の場合には、投資が成功したか失敗したかを計
る基準を、あらかじめ用意することが重要です。それは何でも構いませんが、客観的に評価するために数字で表せることが重要です。

寒い季節です。体調を崩さないようにご自愛ください。来年もよろしくお願いいたします。

2018年11月号

理士 白井 清一

相続時の預金の払い戻し

 現在の法律では、相続が発生した時の預金は遺産分割協議を経ることなく相続の発生と同時に法定相続分が各相続人のものとなり、銀行に自分の相続分の払い戻しを請求することができることになっています。
 しかしながら、現実に銀行の窓口で払い戻しを受けようとすると「相続人全員のハンコを貰ってこい!」と言われて払い戻しに応じてくれません。また、このような取り扱いについて多くの人は当然のことと思っています。
 銀行の実務がこのようなものでしたから、遺産分割協議が成立する前に相続人が自分の相続分の払い戻しを受けるためには裁判に訴えることになりますが、裁判を起こせば裁判所はこの払い戻しを原則的に認めてくれました。
 このように銀行の窓口では、法律の運用とは異なる「銀行の実務」で払い戻しの取り扱いがされておりました。
 これについて、平成2812月に最高裁は銀行実務の取り扱いに沿った「預金は遺産分割の対象である」としてこれまでの法律判断を変更しました。
その結果、遺産分割協議が整わない間は預金の引き出しができなくなり、相続人によっては当面の生活費や葬儀費用などの支払いに困ることにもなります。
 このような経緯から今年春の通常国会の民法改正の中で、「遺産分割協議の成立前においても一部の払い戻しを仮払いとして認められる」こととなりました。
 具体的な金額は、預金の3分の1に各相続人の相続分をかけた金額とされ、各相続人の相続分については今後法務省で決められることになっています。
 これらの法律の運用により来年の夏以降は、法律の規定により計算された金額について遺産分割協議の成立前でも金融機関に対し、他の相続人のハンコがなくとも自分の相続分の払い戻しが受けられることになりそうです。
 具体的に幾らまで払い戻しを受けられるのか、また、そのためにはどのような手続きと書類を準備する必要があるかなど今後の動きに注目したいと思います。
 実際の相続では、相続人間で話し合いを進めている最中にこの単独の払い戻しが勝手に行われると、法律では許されるとはいえ相続人間の話し合いにどのような影響を与えるか別な問題が起きそうです。

税理士 中山 吉晴

利益、費用の意味とは?

会社の目的は利益を上げることです。・・・・本当ですか?
いいえ、ミッション(使命・役割)を実現することが会社の目的です。
それが実現できたときのご褒美が利益であり、お金なしでは実現するための活動ができませんから、お金=利益が絶対必要です。
ですから、利益は絶対必要ですが、それが会社の本当の目的ではないのです。
(このことは、会社を始めたばかりの方にはきれい事にしか聞こえないかもしれません)

このことをマネジメントの観点からは次のように表現します。
①利益とは「事業競争力の大きさを表したもの」である。(競争力は商品力と営業展開力で決まる)
②利益とは「成長のための投資財源であり、危機の備え」である。
また、費用(コスト)と損失(ロス)の違いを次のように定義します。
①費用(コスト)とは「成果を生む支出」のことである
②損失(ロス)とは「何の価値も生まない支出」のことである

会社はまず、費用(コスト)を支出します。(例えば仕入れ)
それを売ることで初めて売上が立ちます。
通常損益計算書では、売上から始まって、原価(変動費)を引いて売上総利益、販売管理費(固定費)と進みますが、マネジメント的には逆で、費用が先で、費用がなければ売上は生まれないのです。
販売管理費の中には、例えば節税のためだけの保険料のように、コストではないものが混じっています。会社業績を正しく把握するためには、これを「調整損益」として販売管理費から外して営業利益を計算し、これを前期比や他社との比較に使うべきでしょう。

固定費は少ないほうがいいといわれますが、組織維持の費用であり、企業活動の大きさを表すものですから、その費用が「成果を生む支出」である限り、削ることは活動を小さくすることになってしまいます。
さらに、固定費を①人件費(ヒト)②設備費(モノ)③活動費(カツドウ)④金融費(カネ)に分け、どこに支出の重点を置くか、計画を立てると、経営の効率化が図れます。

2018年10月号

理士 白井 清一

遺言書の作成と保管

 春の通常国会で、相続に関し多くの内容について改正・整備が行われ7月13日に発表されました。
 この改正・整備については、発表の日から6か月ないし2年以内に適用されることになっております。
 今回は、この中で自筆証書遺言について少しお話しをしたいと思います。

〇遺言書の作成
 現在の法律では遺言書に記載する必要事項は、全て自分の手で書く必要がありました。
これが改正されて、財産の内容を記載した財産目録等について、ワープロなどで書いてもよいことになります。
 つまり、遺言の中で「長男 太郎には別紙財産目録1に掲げる・・・」というように記載して、別紙がワープロなどで作成できるということになります。
 ただし、作成された財産目録のすべてのページに署名と捺印が必要です。
要式の厳格さが緩くなったわけではないので、きちんと守らないとせっかく作成しても無効ということにもなりかねません。
 この財産目録等を手書きでなくとも作成できる取り扱いは来年1月中旬から適用されます。

〇遺言書の保管
 これまでは、自分で書いた遺言書で一番難しかったのが「どうやって保管するか!」でした。
 テーブルの上に置いておくわけにもいかず、そうかと言って厳重にしまい込んでしまうといざというときに発見されず役に立たないという事になってしまいます。
 また、遺言書を発見したらこれを裁判所に持ち込んで「検認手続き」を受けなければなりません。このように、保管と検認が遺言書を作成する際の最大の難関だったと思います。
この保管について、「遺言書保管官」という役職が登記所の中に設置され遺言書の保管をしてくれることになりました。
 これからは自分で登記所に出向いて遺言書保管官に自分の作った遺言書の保管を依頼することができるようになります。
 登記所で保管された遺言書については、改めて裁判所の検認手続きもいらなくなります。
 この保管制度は、法律の発表日から2年以内に適用されることになっていますのでもう少し時間がかかりますが、適用されれば自筆証書遺言の作成が格段にし易くなると思います。

税理士 中山 吉晴

全損保険の使い方

法人で「掛け捨て」の生命保険(定期保険といいます)に入ると、保険料が全額経費(法人の場合損金といいます)になるのが原則です。
(いろいろな条件がありますので、契約前によく保険会社の人に説明を聞いてください)

この保険(全損保険)は次のような特徴を持っています。
①掛け捨てではあるが、何年後かに解約すると解約返戻金が戻ってくる。
②その返戻金が一番多いのは5年目くらいで、支払った保険料の77~85%位戻ってくる。
 (保険会社によって、返戻率は変わります。また、その後は返戻率が下がり、最後は0になります)
③返戻金は雑収入(法人の場合益金といいます)になり、税金がかかります。
次の表1のような、毎年1000万円の利益の会社がこの保険を利用したらどうなるでしょう

毎年1000万円の利益が出る会社は、法人税等の税金を払うと、キャッシュの手残りが730万円、5年後には3648万円のキャッシュが残ります。
その会社が、毎年、1000万円の保険料を全損でかけたらどうなるか?
次の表2のようになります。
(保険の戻りは最高の85%と仮定しました)

含み益はその年で解約したら、戻る金額のことです。
5年目で解約
5年後のキャッシュは表1の方が900万円多く、保険を掛けないほうが有利です。
ところがもしも、5年後に役員退職金を払うとしたら、表1の場合はキャッシュの残り3648万円しか払えま
せんが、保険に加入した表2の場合は、保険の戻りの4250万円払うことができます。
つまり、全損保険は、5年後に満期の利益と同額の損金(退職金など)が計画されているときに、節税効果があり、有利ですが、そうでなければ、満期の時に課税され、かえって不利になってしまいます。
つまり、保険をかけるだけでは単に課税を繰り延べているだけで、得にはならないので注意が必要です。

2018年9月号

理士 白井 清一

株式の納税猶予(その4

 今回は納税猶予が打ち切られ、猶予税額を納付しなければならない場合と納税猶予税額が免除される場合についての話をしたいと思います。

1)納税猶予が打ち切られ本税と利子税を納付することとなるのは、主に次のような場合です。
① 継続届出書を提出しなかった時。特例承継期間である申告期限から5年間は毎年、特例承継期間経過後は3年ごとに必要書類を添付して税務署に継続届出書を提出する必要が有ります。
② 特例承継期間内に株を一部でも手放した時。ただし、特例承継期間の5年経過後であれば手放した株に相当する猶予税額と利子税を納付することで、残りの部分は納税猶予が継続します。
③ 特例承継期間内に特例後継者が会社の代表権を失ったとき。ただし、病気など一定のやむを得ない場合の措置が有り、また、特例承継期間経過後に代表権を失っても株を保有している限り納税猶予は継続します。
④ 特例承継期間の末日において会社の雇用者の平均が贈与・相続時の雇用者数の8割を下回った時。 ただし、8割を下回った理由について報告書を知事に提出し確認を受けることにより納税猶予を継続することができます。


2)贈与税の納税猶予は次のような場合に免除されます。
① 先代経営者(贈与者)が死亡した場合。
② 株の贈与を受けた後継者が死亡した場合。
③ 特例承継期間経過後に会社について破産手続きの開始決定が有った場合。
④ 特例承継期間経過後に次の後継者への免除対象贈与が有った場合。
⑤ 特例承継期間内にやむを得ない理由により代表権を有しなくなった後に免除対象贈与を行った場合。
  相続税の納税猶予税額の免除についても①以外は贈与税の免除要件と同じ内容です。


 自社株の納税猶予についての話でしたが、まず自社の株について特例承継計画を提出するかどうかをMBCにご相談頂きたいと思います。

税理士 中山 吉晴

経営者たるもの、数字に強くなりましょう。

複式簿記なしには、近代的な資本主義は成り立たないし、近代国家も、もちろん会社も、存続できない。
アダム・スミスもカール・マルクスもそう考え、福沢諭吉は明治日本に複式簿記を紹介し、その重要性を世に知らしめた。
なんてことは、簿記を勉強し始めたころは知る由もなく、税理士資格を取った後でもそんなに重要だとは思いもせず、経営を考えるようになってようやく「あれ?ちゃんと簿記をやらないと、経営状況がみえない」と痛感してきました。(ボーっと生きてるんじゃねえよ!)

起業したばかりのころは、働くのが先で、帳簿なんかどうでもいい、という社長がほとんどです。
それでも、儲かっているかどうかは自分なりに計算するのですが、これが単式簿記的な計算です。
会社のように多数の取引、複雑な取引、掛け取り引き、などがある場合は、単式簿記では把握しきれませんし、なにより計算した結果が、正しいかどうかの証明ができません。
複式簿記は、貸借の一致ということで、計算が正しいという証明ができることが、決定的に違います。

複式簿記は、一つの取引(仕訳)に、二つの側面(勘定科目)を認識し、記帳します。
例えば、現金で機械を買ったという取引は、現金が減ったという側面と、機械が増えたという側面があります。
これを現金勘定のマイナス(貸方)と機械勘定のプラス(借り方)と記帳し、同じ金額を貸方、借り方両方に記帳するので、貸借が一致しない時は、計算が違っていると判ります。
また、現金の支出でも、その性質を資産の増加・負債の減少・費用の発生などに分類することで、複雑な企業の姿を、より正確に映し出すことが可能になっております。
ちなみに例示の取引の場合、現金も機械も資産ですので、資産が同額増減しただけで、まだ利益も損失もありません。
しかし、単式簿記的な感覚だと現金が減っているため、赤字と思うかもしれません。

このように、社長は儲かっていると思っているのに、本当は赤字だったら?
間違った商売に資金をつぎ込み続けて、倒産してしまうかもしれません。
逆の場合には、本当は儲かっているのに赤字と思ってやめてしまうかもしれません。
これを正しく把握するのが、損益計算書(P/L)であり、貸借対照表(B/S)です。

利益が出ていても、資金繰りが回らないことがあり、黒字倒産してしまうかもしれません。
これを把握するのが、キャッシュフロー計算書(C/F)であり、資金繰り表です。

ある程度の規模の会社になったら、社長は数字が苦手などと言っていられません。
これらの帳票をある程度読みこなし、次の一手を考えることが、経営者の重要な仕事です。

2018年8月号

理士 白井 清一

株式の納税猶予(その3

 今回は相続について話をしてみたいと思います。例として贈与の話と同様に、会社の代表者であるAさんが800株、奥さんであるBさんが200株所有し、すでに役員に就任している息子のCさんで会社を運営していたとします。

平成35331日までに特例承継計画書を提出し確認を受けていましたが、Aさんの急逝により相続が開始してしまいました。

この場合に相続税の納税猶予を受けるためには、Cさんは、相続開始から5か月の間に会社の代表権を取得し、Aの所有していた株を相続により取得し筆頭株主になった上で特例承継計画に沿って知事の認定を受け、必要書類を添付して相続開始後10か月以内に相続税の申告をすることにより納税猶予を受けることができます。

ここで問題なのが、相続の開始が平成391231日までに限られると言う事ですが、Aさんに言わせれば、「俺に、それまでに死ねと言うのか!」と言う事になります。

このような相続開始と言う未確定の要素を前提とするのではなく、この特例制度は、順序としてまず贈与を行い贈与税の納税猶予を受け、その後贈与者に将来相続が発生した場合には相続税の納税猶予への「切替確認」により納税猶予を継続しようと言うものです。

この制度で最も重要な事は、平成35331日までに何が何でも「特例承継計画」を知事あてに提出しなければ、他の要件を満たしていたとしても適用を受けることができないと言う事です。
 
まず贈与と言う事ですが、特例後継者の条件によっては直ちに贈与できない場合もありますので、遺言により株が特例後継者に引き継がれるようにしておく必要が有ります。特例後継者が息子(相続人)であれば相続により取得が可能ですが、相続人以外の場合には遺言が無ければ株を相続で特例後継者に引き継ぐことはできません。

従いまして、事業承継の計画の中で遺言書の作成も準備することが重要となります。

税理士 中山 吉晴

資本主義で儲かる人は?

バブルの頃、ある若い社長が、「いい車を買ったり、贅沢したいから事業を始めたんだ。今期儲かったんだから車を買って悪い?」と私に言いました。
少し利益が出始めたとたんに、2千万以上するベンツを買おうとする社長を、止めようとしたときです。
こう考えている社長は結構多くて、私自身、どこが悪いんだかよく分かっていませんでした。
ただ、この会社はその数年後に赤字になり、ベンツも売り、会社を潰してしまいました。

今なら、それがダメな理由を説明できます。
それは日本が資本主義の国だからです。(大げさですが)
資本主義とは、資本(お金)を集めて、投資して、儲けましょうというルールのことです。
このルールに沿って、小さくても資本家になることが儲けの道なのに、この社長は、せっかく利益を出して、儲かったお金を、投資せずに、消費してしまった。
資本家になるチャンスを自分で捨ててしまったわけです。
利益を再投資することで、もっと儲かり、会社が大きく、寿命が延びる可能性を潰してしまったのです。(ベンツも投資の一種ですが、直接、生産性の向上にはつながらないという意味で、消費です。)

なぜ、この社長は投資せず、消費してしまったのでしょう?
それは、事業計画がなかったからです。
ベンツに乗るにはいくらの利益を、何年出さないといけないか、分かっていなかったからです。
計画を立て、それが分かっていたなら、年利益が1千万円を超えるまで我慢だな、とか思ったはずです。たとえば5年分の売上げ、利益、キャッシュフローを数字でまとめておくだけでいいのです。
そうすれば、儲かったお金を使ってしまえば資金繰りが回らないだとか、ベンツの償却費で赤字になるとか、分かったはずです。
さらに、業界の動向を考え、いつ、いくらの設備投資をするという計画や、社員を増やす計画など投資の計画も盛り込めれば、怖いものなしです。

我々中小企業の限られた資本、「ひと・もの・かね」。
目的に向けて集中して投資してこそ、効果が得られます。
バブルの頃はともかく、今の時代に事業計画なしで事業を進めていくというのは、この限られた資本を、分散、非効率に投資することです。
それは、レーダーなしで霧の海を航海するようなものです。
それなら、面倒でも事業計画を作る方がましではないでしょうか?

2018年7月号

理士 白井 清一

株式の納税猶予(その2

 今回は、具体的な贈与を前提に話をしてみたいと思います。

 代表者であるAさんが800株、奥さんであるBさんが200株所有しているときに、役員に就任して3年経った息子Cを後継ぎにして株を引き継ぎたいと考えた場合を想定するとこんな具合になります。

 先ずは、息子Cを後継者候補として「特例承継計画」を平成35331日までに都道府県知事に提出し「確認」を受け、その後で会社の代表権を息子のCに譲ってからAの持ち株を平成391231日までにCに贈与する。

 代表者になったCは株の贈与を受けたら会社・先代経営者・後継者が特例の要件を満たしていることの都道府県知事の「認定」を受けてから贈与税の申告期限までに、特例承継計画書や認定書などの写しを添付して贈与税の申告をすることにより株についての「贈与税の納税猶予」を受けることができます。

 Bの持ち株についてもAの贈与と一緒にCに贈与し納税猶予の対象に取り込む事が出来ます。

 この猶予される贈与税について、猶予される贈与税額と利子税に見合う担保の提供が必要ですが、特例の対象となる株の全部を提供することで担保とすることができます。

 後継者が推定相続人である息子と言う設定でしたが、推定相続人で無くとも甥・姪や他人であっても特例後継者の対象とすることができます。

 特例対象とした株については、贈与者の相続の際に相続税の計算に取り込まれることからも、この特例適用のための贈与税の申告は「相続時精算課税」の制度を使う事がすすめられます。

 こうして納税を猶予された贈与税は後継者がその株を持っている間は定期的に手続きをすることにより猶予が継続されます。

 その後、贈与者のAやBに相続が発生すると、贈与を受けた株は贈与の時の価額で相続税の計算に取り込まれ、猶予されていた贈与税は免除されます。
贈与者の相続税の計算で取り込まれた株について、再度「相続税の納税猶予」の適用を受けることにより納税猶予が継続されていきます。

税理士 中山 吉晴

たまには定款を見てみましょう

定款とは、いわば会社の憲法にあたる、大事な規程です。
このうち法定の重要な事項のみを選択して記載しているのが、会社の登記簿(謄本)です。
これらはめったに見ることが無いですが、次のようなことは、見直してみることも必要です。

名義株が残ってないか?
本当は、社長がお金を出したのに、株主の名前だけ借りている「名義株」はないでしょうか。定款、法人税申告書の別表、会社の株主名簿などを確認して、まだ、名義を借りている人の名前になっているようであれば、正しい株主の名前に替えなければなりません。
そのままにしておくと、その人が亡くなった時に相続財産にされる、その人が税金の滞納をすると、差し押さえられる、事業承継税制の特例を受けるときにややこしい、などの問題があります。
その人や社長など、当時の事情を分かっている人が健在なうちに、「名義株であることの確認者」などに署名捺印してもらうなど、手を打っておく必要があります。

株券不発行会社になっているか
定款に、株券(千円券とか1万円券など)を発行すると書いてある会社があります。
これも、事業承継税制を行う時、手続きが面倒になります。
不発行会社にした方がいいでしょう。
もしも名義株の人が、株券を持っていると、①の話はもっと面倒になります。

③役員の変更や住所の変更はないか
こういった変更があったにもかかわらず、登記を変更しないで何年も経過すると、罰金を科されます。
特に住所は忘れやすいので、よくご確認ください。
また、役員の任期は会社によって違い、定款に規定されていますので、任期切れにご注意を。

本店所在地はどこか
本店所在地が社長の自宅で、会社の事務所や工場など、実際の活動をしている場所が別の場合には、本店所在地を実際の活動の場所に訂正すると、税金が安くなる場合があります。
例えば、本店所在地が相模原市中央区で、事務所が南区の場合、それぞれに均等割りという税金がかかりますが、南区に統一すれば、1か所分に減ります。

この他にも、事業年度は今のままでいいのか、役員の人数は適正か、監査役は必要かなど、改めて考えると、訂正した方がいいことがあるかもしれません。
MBCの担当者にご相談ください。

2018年6月号

理士 白井 清一

自社株の納税猶予(その1) 

 今年の税制改正で既存の制度の特例措置として新設された非上場株式の納税猶予について、その概要をお話ししたいと思います。

 この納税猶予とは、親(先代経営者)が持っている自分の会社の株を息子(後継者)に生前に贈与したり、相続で後継者が取得した場合にその株に対応する贈与税や相続税の納税を猶予し、一定の条件が成就したら猶予税額を免除すると言うものです。

 一般的には、親が株主で、かつ代表者であり、その子供が後継者として一緒に仕事をしているでしょうから、これを前提にすると次のようになります。

1 納税猶予を受けられる期間
平成39年12月31日までの10年間に限定され、この特例を受けるためには、平成35年3月31日までの5年の内に「特例承継計画書」を都道府県知事に提出することが必要です。

2 贈与者等(先代経営者)について
会社の代表者であった時と贈与・相続の両時点で議決権の過半数を持っていること。
先代経営者がこの要件を満たせば、同時に他の人(母親など)からの贈与も対象に取り込めます。

3 贈与・相続・遺贈で株をもらう人(特例後継者)について
後継者候補には20歳以上であれば推定相続人以外でも可能です。つまり、他人であっても候補者になってもらい株を贈与できます。この特例適用対象者となれるのは上記の特例承継計画書に記載された後継者に限られ、この後継者の候補に3人まで認められます。
贈与の場合は、代表権を先代から譲られた後である事、贈与の時点で役員に就任してから3年以上経過していることが必要です。また、相続の場合は相続開始後5か月以内に後継者は代表権を取得している事が必要です。

4 相続税の課税関係

 先代の相続に当たり贈与した株を含めて相続税が計算・清算されます。

税理士 中山 吉晴

最近の税務調査事情

税金はなるべく払いたくないというのが、人類共通の思いですが、社長の中には行き過ぎてしまい、節税を通り越して、脱税のところまで足を踏みいれてしまう方も、まれではありますが、いらっしゃいます。
それを摘発しようと、税務調査が来ます。

脱税の方法は、売上を抜く、原価(材料費や外注費)を水増しする、架空人件費を計上する、などが代表的な手口で、税務調査の主目的は、これらが無いかをチェックするということになります。
見積もりや契約書、受注簿などの基礎資料を確認するのはそのためですし、売上と原価の対応関係を見れば、水増しが発見できます。
タイムカード、履歴書、配席図、組織図などを見るのは、架空人件費の発見のためです。

とはいえ、最近では、そんな単純な脱税をやる社長もめったになく、調査初日でこれらの問題が無ければ、2日目は期ずれ、個人的経費の会社へのつけこみ、源泉所得税の課税漏れ、などにポイントが変わります。

期ずれとは、期末ぎりぎりの売上が翌期にずれることで、一般的な感覚ではどちらでもたいした問題ではないのですが、税務署は見過ごしてはくれません。棚卸し計上漏れも期ずれです。

個人的経費、つまり個人の飲食代や自宅の修理費、食費、水道光熱費や旅行費用など、本来会社の活動とは関係ない支出は、税務署が発見すれば、かなりな税金になってしまいます。
つまり、会社の経費として否認されるので法人税がかかり、そのお金を社長の賞与とされることで個人にも所得税、住民税がかかり、さらに罰金が上乗せされることで、80~90%もの税金になってしまうのです。
最近では、スイカの支出明細を調べることで、そういった個人的支出がされていないか調べることもやります。

源泉所得税の課税漏れで代表的なものが、次のようなものです。
一人親方を外注費で扱っているが、当社専属であり、請負ではなく日給払いなので、給与とされた。
(この場合、消費税と源泉所得税が、5年間さかのぼられます
交通機関を使わない社員(たとえば自転車で来る人)に、通勤手当を支給し、これを非課税扱いにした。
(非課税にしなければ問題ありません)
源泉所得税の場合、本人から徴収できればいいのですが、5年も経過していると、それが難しい場合も多く、けっこうやっかいです。

調査はだいたい3~5年おきに来るのですが、税務署職員の人数より、法人の数の方が圧倒的に多いので、どうしても利益の出ているところ、その中でも、変わった動きをしているところなどが、調査されます。
ある意味、調査が来る会社になって、ようやく一人前といえるのかもしれません。

2018年5月号

理士 白井 清一

事業の承継 

 昨今、事業承継について各分野で取り沙汰されております。
先日の新聞にも「日本企業M&A最多」後継者難の中小企業にもと言う見出しで企業の合併・買収の記事が目に留まりました。

 経済産業省は中小企業基盤整備機構の事業として47都道府県に「事業引継ぎ支援センター」の窓口を開設しています。

 また、民間業者も事業承継については精力的に活躍しており、税理士会の全国組織である日本税理士会連合会においても事業承継に関し当事者の斡旋ができるようなシステムを構築しようとしています。

 なぜこのように民間を巻き込んで国を挙げてまで事業承継問題に躍起なのでしょうか。

 我が国の産業基盤は中小企業が担っていますが、経済産業省の統計では、経営者が60歳以上で後継者が決まっていない中小企業の数が127万社ほどあるとのことで、この数は、日本企業の3分の1に相当するとのことです。

 これらの企業が後継者問題で大量に廃業すると、雇用や技術の伝承、部品や製品の供給網などに大きな打撃となり日本経済の将来に悪影響を与えることを回避するためです。

 中小企業と言っても、その規模は上場企業に匹敵するようなものから零細企業と称される町工場や商店まであります。このような小規模な企業ほど後継者について悩んでいると言うのが実態ではないかと思われます。

 規模の小さい企業の経営者ほど、自分の事より会社優先と言う事で資産を会社につぎ込み、事業の引継ぎを考えるころには財産は会社の株だけと言うような事態となり、この株の引継が問題となります。

 この問題について、今年の税法改正で期間限定ではありますが、株式に関する納税猶予制度が現行制度と併行して創設され、従来の株式の納税猶予制度より特段に適用し易くまた猶予される税額も有利になりました。
今後は、この新しい株式の納税猶予制度を使って会社の事業承継を検討していきましょう。

税理士 中山 吉晴

10年のうちに中小企業の58%の社長が交代?

事業承継の話を白井税理士とは別の視点からお話します。
中小企業の数は全国で380万社、社長の平均年齢は61.4歳です。(2017年の東京商工リサーチの資料)
年齢別にみると、70代以上26.1(帝国データバンクの統計だと80代以上3.8%なので22%が70代ということになる)6031.9で、合計58%が60代以上ということになります。
(このうち、127万社の会社で後継者が決まっていないわけです)

社長の平均引退年齢が69.1ということなので、この58%の会社はあと10年のうちに、社長交代することがかなり確実です。
その時に一般的な例として考えられるのが、次のようなパターンです。

   健全企業①  ⇒ 後継者へ事業承継
   健全企業②  ⇒ 後継者なく、M&A(会社を売却)
   不健全企業① ⇒ 一部の健全な事業のみを売却
   不健全企業② ⇒ 廃業
事業承継について
事業承継のためには、自社の株を後継者に引き継がせ、そこに多額の税金がかかるのが、大きな問題でした。
ところが今年度の改正で、事業承継税制が大幅に緩和され、一定の条件を満たせば事実上税金0で引き継げるようになりました。(風俗営業会社、不動産賃貸会社等、一定の会社を除きます)
この特例を受けるためには、202331日(年後)までに「特例承継計画」を都道府県に提出し、認定を受けなければできません。
その上で、後継者(最大3人まで)に株を贈与して、事業承継するというのが、制度の骨組みです。
まだ、細かい規定が整備されていないため、情報収集の段階ですが、MBCでは7月7日に「ぽっぽ町田」で事業承継税制のセミナーを予定しております。
こんな税制を作るということは、国もこの10年で中小企業存続の危機ととらえて、税制でバックアップしていることは明白です。
事業承継には最低3年はかかるというデータもあり、のんびりはしていられません。

M&Aについて
うちのお客様でも、会社の売却や、事業意欲の強い社長が会社を購入したりがすでに実際に行われています
M&Aのサイトなども数多くでき、どんどん進むと思われます。

こういったことが進むと、あなたのライバル企業がある日、M&Aで強い会社に変身したり、若い社長に代わって AI技術を駆使して市場を奪われたり、ということも現実になるかもしれません。

2018年4月号

理士 白井 清一

年度変わり 

 この季節、学校は卒業と入学、企業は定年と新人の入社を迎え、経営者の中にも定年或いは後進に道を譲るために退任や退職される方が居られることと思います。

 この時の退職金の額ですが、税務上の問題として、どの程度までなら会社の損金として認められるかと言う事がよく取り沙汰されます。

 税法上は、退職給与規定などに基づき合理的に決定された金額で不相当に高額でなければ会社の経理上損金の額に算入されます。

 その要件の一つは退職金の支給が決定されるための手続きが適法に行われていること。つまり、株主総会や取締役会などで決議がされており、これを証明するためにもその議事録が作成されていること。

 もう一つは、退職金の額が合理的な基準で決められており不相当に高額でない事ですが、これが実際には実務で一番難しい事柄です。

 この金額については、一律に決定する方法が無く会社側でいくら「合理的に決めた!」と主張しても問題にされることが有ります。

 この金額決定方法の一つに「功績倍数方式」と言われる次のような計算方法があります。
最終報酬月額 × 在任期間 × 功績倍率 = 役員退職給与の額

 ここで問題になるのが「最終月額報酬の額」と「功績倍率」です。
毎月の役員報酬の金額については、後継者への引継ぎや他の理由で通常は徐々に報酬金額を下げていく事が多いと思われますが、原則的にはこの下がった状態での退職時の最終月額だとするのが税務上の取り扱いです。

 もう一つが、功績倍率ですが、通常は最大で3倍と取り扱われています。この3倍についても理由付けが必要であり、問題とされる例が有ります。

 税務調査では同じ業種で同じような会社のサンプルを基にこの功績倍率を決定し不相当であるかなどを判定します。

 役員退職金の額を功績倍率方式により決めようとする会社は、役員報酬の減額と功績倍率の設定を慎重に決定する必要が有ります。

税理士 中山 吉晴

赤字の仕事をどうしますか?

誰しも、赤字になるとわかって仕事をすることはないはずです。
ただ、注文書をもらわずに仕事をしたり、追加工事や突発的な仕様変更などの時、赤字仕事になりやすいようです。
いずれも、事前に金額を明確に約束していないことが、よくないようです。
しかし、突発的でもなく、注文書ももらっているのに赤字になってしまう仕事もあります。
それが毎月あると、金額によっては会社の経営を揺るがしかねない問題になります。
これを防ぐためには、原価管理が必要です。

原価管理とは、単純に言ってしまえば、商品ごとの実際の売上と原価を計算して、商品ごとに儲かったか、損したかを確認することです。
この計算はかなり面倒なので、中小企業ではほとんどやっていないのが実情です。
つまり、会社全体で儲かっているか損しているかは分かっても、どの仕事で儲かっているか、分かっていないわけです。
もしも同じ得意先でも、A商品は利益、B商品は赤字であるなら、Aの売上を伸ばし、Bの売上を減らす営業戦略ができれば、仕事量が同じでも、利益は増やすことができます。

原価管理をして、実際の利益が分かったら、これを会社が考えている標準利益と比較します。
そうすると、材料費が高いとか、外注費が高いとか、わかるはずです。
会社が考えているより高い場合には、原材料の無駄遣いはないか、不良の発生が多くないか
不正(材料の横流しなど)はないかなど、まず内部の問題を洗い出します。
そこに問題が無いのに、予定の利益が出ない場合は、仕入れ値を見直します。
何社かで見積などをとれば、既存の仕入れ値が適正かどうかわかります。

それでも予定の利益が出ない、赤字だという場合は、取引先に値上げをお願いする必要があります。
きちんと原価管理をやっていること、原価低減努力をやっているが、それでも赤字になってしまうことなどの数字の根拠を示しながら、説明すると案外うまくいくようです。
また、原価管理をやっておくと、どこまでだったら妥協でき、死守するラインはどこか、わかります。
これを持っていると、交渉にメリハリができ、有利に進めることが可能です。

得意先だから無理とあきらめずに、正直な数字を話すことが肝心です。(ただ機嫌は損ねないように)
もし、値上げが無理でも、利益が出るA商品の発注を増やしてもらうとか、他の攻め方も考えられます。

2018年3月号

理士 白井 清一

確定申告とAI 

 只今、確定申告事務の最中でMBCの職員は連日超多忙な仕事を精力的にこなしています。

 新聞やテレビの報道によれば、全国の税務署の総元締めである国税庁長官の佐川氏の問題が国会で取りざたされているとのことです。

 理財局長であった時に「虚偽答弁を疑われている国税庁長官が納税者に適正申告を促すのは如何なものか。」と言う事のようですが、国税庁長官が当時どのような国会答弁をし、仮に、いかに悪人であったとしても我々が確定申告し納税をしなければならない義務を免れることはできません。

 この確定申告事務は簡単に言えば、昨年一年間の収入と経費を集計し決算を行い、これに基づき所得税の申告書を作成して税務署に提出すると言うものです。

 これらの事務作業もご存知の通り、昔は手書きの帳簿と算盤で集計し、申告書を書いて添付書類と共に税務署まで提出に出向いていました。

 これが今や、コンピュータに入力し帳簿と申告書を作成し、インターネットで申告書を提出するまでになりました。

 これらの事は、国の政策によりコンピュータ化がすすめられた結果ですが、これからは益々コンピュータによる処理が求められ今年の税法改正でも事業所得や不動産所得などは申告書を紙で提出すると青色申告控除が減額されて税金が高くなります。

 このように今やコンピュータに依存した事務処理がますます進められ、将来はマイナンバーを使用することにより我々の日々の取引が全て把握され、これから飛躍的に発展すると考えられるいわゆるAIにより申告書まで作成できるようになり、納税者が意識することなく税金の申告が済む時代が来るかもしれません。

 もしもこのような時代になったとすると、我々の納税者としての意識は更に低下し政治や行政に対しものを言おうとする気概も下がると感じるのは私の空想だけの事でしょうか。

税理士 中山 吉晴

社員の給料はいくら位が世間相場?

中小企業では、社員にいくら位給料を払っているか?気になるところです。
以下①~④は、TKC全国会がまとめた中小企業のデータからの抽出です。

男性の場合、20歳250万(年額・以下同じ)、30歳330万、40歳400万、40代後半で最高額428万円、その後60歳までは400万円台、60歳を境に急激に下がるパターンです。
女性の場合、20歳220万、30歳280万、40歳300万、50代後半で最高額307万円、その後60歳までは300万円台、60歳を境に急激に下がるパターンで、やはり男女格差が顕著に見られます。
③業種別に最高額を見てみると、情報通信業が464万で最高、次いで建設業423万、卸売業400万、運輸・郵便業、不動産業、製造業390万、小売業360万、宿泊業・飲食サービス業330万、最下位は娯楽業・生活関連サービス業の325万となっています。
大卒初任給は20万円台が多いようです。  
                                              
あくまで統計ですから、個別に見ればもっとずっと高い給料を払っている会社もあるはずですが、ひとつの目安としては、「年収400万円」が中小企業の一人前の給料、と言えます。
うちの事務所のお客様でも、400万が中位の年収とみて、差し支えないと思います。
感覚的ですが、600万円払っていると、結構いい給料、と言えそうです。

ですからうちの経営分析では、会社全体の給料を400万円で割った数を、人数の目安とします。
例えば、社員全員に年間で4800万円の給料賞与を払っていれば、これを400万で割ると、12人となります。実際の人数がこれより少ない場合は、給料が高い人がいるのかもしれません。
逆に実際の人数が多い場合は、給料が安い人がいるかもしれない、ということになります。

労働分配率は低い方が利益の出やすい会社ということになりますが、給料が世間よりも安いために労働分配率が低い場合は、社員が辞めてしまうかもしれず、結果、会社はうまくいかなくなることも考えられます。この判断をするときに、年収400万円は、いい物差しになります。

また、400万円÷12ヶ月÷22日=日給約15千円、÷8時間=1893円≠時給約2千円
600万円の時、日給約23千円時給=約3千円となります。
ですから、400万円の社員に1時間働いてもらったら、労働分配率50%としても、4千円以上の粗利が必要です。 これに材料費、・外注費を足せば、売上となります。
この時間数には、現場への往復の移動時間も加算することは言うまでもありません。

2018年2月号

理士 白井 清一

いよいよ確定申告です 

 今年もいよいよ確定申告の時期が参りました。
確定申告というのは、言うまでもなく、昨年一年間の個人の収入に関する税金の清算をするためのものです。

 昨年12月14日に与党の税制調査会から平成30年度の税制改正大綱が発表され、法人税、所得税、相続税などの改正が予定されています。

 特に所得税は、法人税の軽減措置とは反対に、働き方の多様性と格差の是正に対処するとして、税制改正大綱の冒頭にあるように「個人所得税の見直し」が掲げられ高額給与所得者の給与所得控除や公的年金控除の引き下げ、また、基礎控除の手直しなど政策に沿った改正が予定されています。

 1月22日に召集された通常国会で改憲論議や国有地の不適切な売却問題など政治的に重要な議題もありますが、この税制改正大綱に掲げられた改正案により年度内に各税法が改正され、ものによっては年度初めの4月1日から施行される予定です。

 法人税の軽減措置について、エコノミストや政治家は法人税の減税により企業が投資を増大し賃上げをすることにより景気の好循環が期待できると説明している。

 しかしながら、大企業はともかく我々中小零細企業にとって法人税の軽減措置がどれほど投資や賃上げに繋がり景気に与える影響が有るかは疑問である。

 個人・家計に負担の増加と再分配機能を求められても現状は個人消費の低迷が景気回復の勢いを弱めており、その上、平成31年10月からは消費税率が10%に引き上げられる事が決まっています。

 このように、個人の税金や社会保障費の負担を増加させることは個人の可処分所得の減少となり、将来の不安に対し更に消費支出が切り詰められるのではないかとは考えられないでしょうか。

 少子高齢化の中で諸々の問題を抱えた社会ではあるが、需要を喚起し持続的に発展する経済にするために、小手先の政策ではなく何か根本的に有効な手段は無いものでしょうか。

税理士 中山 吉晴

中小企業の実態は?(MBCデータより)その3

さて、MBCの統計による中小企業の実態についても、今回で最終回です。

平均売上高2.9億円、平均売上総利益8千万円(売上総利益率27%)、赤字法人比率29.6%でした。
社長報酬年額平均879万円、税引前利益平均764万円、労働分配率55%となりました。

税引前利益について
税引前利益は、損益計算書の末尾の利益で、ここから法人税等を差し引くと、税引後利益になります。納税前の、会社の最終的な儲ける力を写した利益といえます。

これが平均794万円とは、少々多いように感じる方もいるかもしれません。
しかし、この利益を売上高2.9億円で割ると(税引前利益÷売上高×100)、2.6%、つまり「売上税引前利益率」が2.6%ということになります。
例えば売上が7000万円の会社だと、利益率2.6%は182万円の利益になります。
売上5000万円の会社だと130万円になり、それほど多い金額にはなりません。
これはごく一般的な利益率であり、全国的な統計でも2~4%が一般的な割合のようです。

最近だと金融機関などでも、「営業利益」を重視する傾向が強く、税引前利益がマイナスでも、営業利益が黒字であればよし、とする場合もあります。
営業利益は稼ぐ力を表すものですから、これがマイナスということは、どんなに頑張って仕事をしても赤字になってしまうことを意味します。
逆にここが黒字であれば、税引前利益が赤字になっても、本業以外の赤字なので許容されやすいということです。

では会社として、利益はどのくらいあげるべきなのでしょうか?
売上の2~4%というのも一つの基準ですが、総資産利益率が5%以上というのも、重要な基準です。
総資産というのは、預金、売掛金、在庫、建物、車両など、事業のために投資しているすべての資産の金額の合計で、これの5%の利益ということは、投資に対する利回り5%ということです。
あまり低い利回りだと、リスクをしょってまで商売をやっている意味がなくなりますので、やはり5%程度を目指したいものです。

もう一つ、社員・役員の人数×100万円、つまり5人ならば500万円以上の利益をあげるというのも、一つの目安としてください。(根拠はありませんが)

2018年1月号

理士 白井 清一

年の初めにあたり

 
 あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い申し上げます。
今年は戌年とのことで、景気も、元気に走り回る子犬の様に勢いのあるようになる事を期待したいと思います。
 昨年1214日に自民・公明の与党から「平成30年度税制改正大綱」が発表されました。今年度中には、この税制改正大綱に沿って各税法の改正が行われる見込みです。
 その中で我々個人に直接影響するものとして所得税法の改正が有ります。
具体的には、給与所得控除額の10万円引き下げと給与の収入金額で850万円以上の人については給与所得控除額について195万円を上限とする改正。
 また、年金についても公的年金控除を10万円引き下げることや公的年金が 1千万を超える人の控除額に上限を設けること、また、年金以外に高額な収入が有る人の年金控除額の引き下げなどが有ります。
 その一方、基礎控除の額を10万円増額することにより低所得層については増税にならないよう配慮したとされています。
 このように税負担が増減するような改正になりますが、全体的には財政需要を満たすため増税傾向にあることは間違いありません。
税制改正大綱の冒頭で「個人所得税の見直し」と称して、働き方の多様性を踏まえ、特定の働き方だけではなく様々な形で働く人をあまねく応援し「働き方改革」を後押しする・・・とされています。
 これは、正規雇用制度の崩壊により「様々な形で働く人をあまねく課税し税収を図る。」とも読めます。
 働き方の多様化はますます拡大し、その中ではインターネットを使った取引や、IT関連の仕事で大きな利益を得ている人たちも居ると言われています。
 給与所得で全収入が把握される人の増税をするよりも、未だ完全には把握されていないこれらの人々の課税をきちんとすべきだと考えます。
 今や、死語となった所得の把握状況を揶揄した「9・6・4(クロヨン)」や「10(トー)5(ゴ)3(サン)1(ピン)」などの言葉が復活しないことを願います。

税理士 中山 吉晴

中小企業の実態は?(MBCデータより)その2

 あけましておめでとうございます。
旧年中のご厚誼に感謝いたしますとともに、昨年に倍するご愛顧のほど、お願い申し上げます。

さて、前回の続きで、MBCの統計による中小企業の実態についてです。
平均売上高2.9億円、平均売上総利益8千万円(売上総利益率27%)、赤字法人比率29.6%でした。
社長報酬年額平均879万円、税引き前利益平均764万円、労働分配率55%となりました。

(赤字法人比率について)
日本全体の赤字法人の比率は約70%といわれています。
しかし、会計事務所を頼んで、毎年申告できている会社は、そこまで高い比率ではないと思います。
ただ、MBC顧客の赤字法人比率29.6%は、それにしても良すぎる数字です。これは役員報酬を極端に安くしていることが影響しています。
そこで社長役員報酬+利益の合計が600万円以下の会社を、赤字と考えて、集計してみましょう。
(社長が年120万円の報酬の会社は、480万円以上の利益でないと赤字と考えます。
つまり、600万円の報酬をとっても黒字になるかを、基準と考えました。)
すると、黒字の会社が26件減り、赤字の会社が5件黒字になりました。
これを修正すると、赤字法人比率は約40%です。
やはり、うちのお客様は優秀です!

(社長報酬について)
平均879万円はけっこういい数字です。
中小企業は利益さえ出れば、社長の一存でいくらでも報酬を上げられますので、上はきりがないですが、安定して千万単位の利益が出る会社は、月200万円以上とるようになる傾向です。
ちなみに報酬600万円未満の会社は36%、1200万円以上の会社が14.5%でした。
適正報酬などはありませんが、世間相場がどのくらいか、また後日、書こうと思います。

(労働分配率について)
粗利(売上から材料や外注費などの変動費のみを控除したもの)に占める人件費の割合です。
この比率は、高すぎも低すぎもいけません。人件費には法定福利費や厚生費、退職金も含みます。
粗利の低い会社はこの比率が高くなりますが、さすがに上位の会社は45%前後が大多数でした。
(上位の方の会社でも、例外で30%台、逆に70%台の会社もありました)
平均の55%は頭の隅に置いておいていただきたい数字です。

紙面の都合上、税引前利益のお話はさらに来月にいたします。