税理士からのメッセージ

MBC合同会計ニュース

2024年12月号

年収の壁が103万円から178万円へ?

 
 10月の衆議院選挙で自公連立政権が過半数割れとなりました。その中で浮上しているのが国民民主党が掲げている基礎控除等を103万円から178万円に引き上げるとする政策です。年収の壁を引き上げることによって暮らしへの影響はどう変化していくのでしょうか。今月はその影響をお伝えしたいと思います。
 
◇178万円に引き上げる根拠は?
 国民民主党が基礎控除等を103万円から178万円に引き上げようとしている根拠は、最低賃金の上昇率と関係しています。平成初期のバブル崩壊後から国民の平均年収は横ばいなのに対して、最低賃金は約30年前の1.7倍位に増加しているそうです。その増加率を基礎控除にあてはめて算出されたのが178万円です。
 
◇178万円に引き上げた場合の効果は?
・所得税額等の減税効果
所得控除等の額が大きくなれば課税所得金額が少なくなるので算出される所得税額と住民税額は少なくなります。
 
・企業の労働者不足の解消
パートやアルバイトで働いている人が家族の扶養となっている場合、扶養控除が受けられる範囲内で働く事が多いです。最低賃金が上昇しても103万円のままだと労働時間が短くなるだけです。学生などアルバイトとして採用している企業は一人当たりの労働時間が減少していく事で年末の繁忙期に人手が不足することが問題となっています。なので、103万円の壁を178万円へ引き上げることは企業側にとっても人手不足の緩和につながるのでメリットとなる話です。
 
◇今後の課題
 178万円の壁の問題が解決できたとしても社会保険の130万円の壁の問題は残ります。税金の面ではまだ余裕があるのに、社会保険の関係の130万円の壁で就業調整が必要になるというケースは残ります。むしろ手取りを増加させるという意味では130万円の壁の解決のほうが重要だとする声もあります。これは、所得税、住民税、社会保険の問題が複雑に絡み合っているので全体を考えながら進めていかないと片手落ちになってしまうと考えます。
 
 本年の税理士メッセージは今月で最後となります。一年間ご購読をありがとうざいました。来年も宜しくお願い致します。

2024年11月号

タイトル

 
 相続登記の義務化がスタートして約半年が経過しました。相続登記の義務化が行われた背景には「所有者不明土地」の問題があったからです。相続登記が義務化されたことにより2024年4月1日以降に不動産を相続した場合には、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。また、同日よりも前に相続が発生していた場合でも施行日を起算点として、やはりそこから3年以内に相続登記を行わなければならなくなりました。
所有者不明の土地が増加していくと公共事業や河川改修、道路整備などに支障をきたし空き家問題も深刻化していきます。
 
◇義務化は所有者不明土地の解消につながっていくか?
 
 現時点で所有者が明らかである土地について今後、所有者不明の状態になる事を防ぐ効果は期待できると思いますが、既に所有者不明の状態になっている土地については今後相続登記が行われるかどうかはかなり限定的になると思われます。
 そもそも財産となる不動産の名義変更をしていない、というのはそれなりの理由があるからだと思うのです。単純に忘れていたという事もあると思いますが・・・
 相続登記を行わなかった多くの理由として、遺産分割がまとまらなかった、土地が山林や荒野なので相続しても意味がない、相続人は皆親元から離れ、継ぐ者がいない等だと思われます。
 
◇相続登記の費用対効果
 
 何らかの理由で30年ほど登記がされていない土地があったとします。このような場合、相続人の多くの人とは会ったこともないというケースになります。その中で登記申請に必要となる関係者全員の戸籍等を集め、相続人全員と連絡を取り、同意を頂いた上で費用を払い相続登記をする、相続登記の結果、所有権が得られた土地は無価値の上、今後訪れることもない山林であった場合に相続登記をしようと思う人がどれ位いるのか?
 それが上記でお伝えした既に所有者不明の状態になっている土地については登記が行われることは限定的になるのではないか、という事です。
 
 今月も最後までお読み下さりありがとうございました。

MBC合同会計ニュース

2024年10月号

『五輪選手への報奨金と税金の関係』

 
今年は、世界が注目するスポーツの祭典「オリンピック」がパリで行われました。8月11日に閉幕したパリオリンピックでは、日本人選手によるメダル獲得数は合計45個(金20個・銀12個・銅13個)であり、また9月8日に閉幕したパリパラリンピックでは日本人選手によるメダル獲得数は合計41個(金14個・銀10個・銅17個)となりました。閉幕後は、行政や自治体から栄誉賞の授与や所属先の企業などから特別報奨金の贈呈に関するニュースをよく見かけましたが、メダリスト達への報奨金には税金が課税されてしまうのか見ていきたいと思います。
 
◇日本オリンピック委員会(JOC)や日本パラスポーツ協会(JPSA)から支給される報酬金は全額非課税

 
報奨金はメダリストの栄誉を称えるという観点から所得税法上、非課税とされています。実は、平成4年のバルセロナオリンピックまでは報奨金も課税対象でした。しかし当時中学生だった岩崎恭子選手の金メダルに対しての報奨金が一時所得として課税されことに注目が集まり非課税に改正されたそうです。
 
◇JOCやJPSAの加盟団体から支給される報酬金は一定額まで非課税

 
各競技団体から支給される報奨金は、上記の上限額を超える金額に対して一時所得に該当します。各競技団体の財政状況によって金額に差があるようですが、最も報奨金の額が高かったのはゴルフで、金2000万、銀1000万、銅600万でした。一方で予算がないため選手に贈ることが出来ないという団体もありました。
 
◇一般企業等が支給する報奨金は所得税の課税対象
選手の所属企業からの報奨金は給与所得となり、勤務先以外の企業や自治体からの報奨金は一時所得に該当します。
 
今回のパリ五輪では、相模原市からスケートボードの吉沢恋選手とパラリンピックではゴールボール男子の萩原直輝選手が金メダルを獲得しました。本当におめでとうございました! 

2024年9月号

『災害時における税の特例 』

 
今年は正月の能登半島地震に始まり、現在は南海トラフ地震が心配されています。日本は地震大国ですし、これからの時期は台風などの被害も心配されます。
近年では東日本大震災等で大きな被害が出ました。税法ではそのあたりを考慮した救済制度があり、災害による損失が生じた時のために【雑損控除】や【災害減免法】いう制度が用意されています。今月はそれらの制度についてお伝えしていきたいと思います。
 
①被災者の所得税を救済する2つの制度
 
被災者の所得税を減免する仕組みには、【雑損控除】と【災害減免法】の2つがあることは先にお伝え致しました。どちらの制度も確定申告が必要になりますが、救済の仕組みや条件、減免額の計算方法は異なります。また両方の制度を同時に受けることは出来ず、確定申告をするときにどちらの制度が有利になるかを選択しなければなりません。(下記の比較表を参照)
大きな違いとしては、その年の所得が1,000万円を超えてしまうと災害減免法は採用できません。また対象となる資産も災害減免法では家屋と家財に限られ、盗難や横領による損失も対象となりません。要件だけで比較すると雑損控除の方が適用を受けやすいと思います。実際の減免額等の比較については税理士等にお尋ね下さい。
 

 
②申告・納付の期限の延長
 
申告と納税等の救済措置については、自然災害など納税者の責めに帰さないやむを得ない理由により、その申告・納付等をすることが出来ない者が都道府県の全部または一部の地域に渡り広範囲に生じたと認められる場合に、国税庁長官が地域及び期日を指定して、その申告・納付等の期限を延長します。これにより、指定された地域内に納税地のある納税者については、期限延長の申請手続きを特別にすることなく、申告、納付等の期限が延長されます。 ※1
 
※1 国税庁のHPより
 
今月も最後までお読み頂きありがとうございました。

2024年8月号

土地の価格を考える

 2024年の路線価が7月1日に公表されました。路線価とは相続税などの計算をする際に基準となる土地の1平方メートルあたりの評価額の事です。
 路線価の調査の対象となっている全国の約32万地点の平均額は昨年に比べて2.3%増加したそうです。好調なインバウンド需要や全国で進む再開発が価格上昇の要因となっているようです。
 土地の価格は路線価の他に、実勢価格・公示価格・固定資産税評価額の四種類があり、これをもって「一物四価」と言われています。土地は一つとして同じものがないので価格を決めるのが非常に困難です。そこで土地の価格を目的によって四種類に分け評価をしているのです。
 
①実勢価格
 実勢価格とは、土地を実際に売買するときの価格です。過去に売買が成立した際の価格や近隣の取引事例等を参考にして決定されることが多いです。なので不動産広告に掲載されている売却価格はあくまで売主の売却希望価格なので実勢価格とは限りません。
 
②公示価格
 公示価格とは、国土交通省が毎年3月下旬ころに公表する、毎年1月1日時点における標準地を対象に、更地1㎡当たりの価格であり二名以上の不動産鑑定士による鑑定評価で決定されます。
 また公示価格は一般の土地取引に指標を与える役割があり、公共事業用地を取得(収用等)する際の基準となる価格です。
 
③相続税評価額(路線価)
相続税評価額は国税庁が算定するもので、毎年1月1日時点の価格が7月初旬に公表されます。評価額は道路に面する宅地1㎡当たりの価格を基準に算出され、公示価格の約80%の割合で設定されています。
相続税評価額は、税金を計算する際の基準とするだけでなく、金融機関が土地の担保額を決める際にも参考にすると言われています。
 
④固定資産税評価額
 固定資産税評価額は、固定資産税をはじめ、都市計画税、不動産取得税、登録免許税などを計算する際に基準となる価格です。
 固定資産税評価額は各市町村が3年に一度、1月1日時点の価格を算定したもので、公示価格の約70%の割合で設定されています。
 
 最後までお読み頂きありがとうございました。

2024年7月号

『 経営セーフティー共済の改正 』

 
①経営セーフティー共済の概要
 経営セーフティー共済とは国が全額出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構という)が運営するもので、取引先が倒産した際に中小企業者が連鎖倒産、または倒産に至らないまでも著しい経営難に陥る事態を防止することを目的とした共済制度です。この制度に加入して6カ月を経過して万一取引先が倒産し、売掛金等の回収が困難になった場合には掛金総額の最大10倍までの範囲内で借入を受けることが出来る制度です。
 
②加入のメリットは
・掛金総額の10倍の範囲内で被害相当額の共済金の借入を、無担保・無保証人・無利息で受けることが出来ます。
・取引先に倒産等の事態が発生していない場合でも、解約手当金の95%の範囲内で借入することが出来ます。
・毎月積立ていく掛金の全額が損金または必要経費として計上できます。
・掛金納付月数が40カ月後の解約であれば100%の解約手当金を受け取ることができます。
 
③加入目的の現状
 2011年10月に共済制度の改正があり、掛金の積立限度額が320万円から800万円に増額されました。中小機構の調べではこの改正により加入者が増加する一方で解約件数も増加傾向になっていきました。特に解約が多いのは加入後3~4年目で解約件数全体の3割を占めていて、更に2年以内に再加入する割合が8割以上を占めたため、これは節税目的を主として共済制度の本来の目的とかけ離れてきていると中小企業庁では指摘していました。
 
④制度の改正 (解約直後の再契約の見直し)
 上記③の状況を踏まえ、今回の改正では解約後に再契約する場合、解約日から2年を経過する日までの間に支払った掛金については損金算入を認めない、とする改正になりました。
 

2024年6月号

『7月から新紙幣が発行されます!』

 
 来月の7月3日から新紙幣が発行され肖像画が以下のように変更されます。
    千円札 野口英世 ⇒ 北里柴三郎
 五千円札 樋口一葉 ⇒ 津田梅子 
 一万円札 福沢諭吉 ⇒ 渋沢栄一
 今回リニューアルされる目的として財務省は「にせ札防止」と「ユニバーサルデザイン」の2つの観点からであると説明しています。
 にせ札防止については単にデザインを変更するだけでなく、紙の厚みをわずかに変えたり、高度な透かしを取り入れたりと新紙幣が発行される都度、偽造防止の技術が高度化されているそうです。ユニバーサルデザインの観点からは、訪日客の増加を受け、外国人にも分かりやすいように額面数字を大きくし、また視覚障害者にも配慮された触って券種が識別できるマークも配置されるそうです。
 
①事業者に与える影響は
 新紙幣の発行に伴い特需に沸くのはATMや両替機などを製造する関連業者ですが、一方で新紙幣への対応が負担となっている中小企業者も多くいると思います。特に飲食店やパチンコ店などのBtoCの事業者では自動券売機などの入れ替えや更新作業で多額の費用が予想されます。これらの税務上の取扱いについて、新札への対応はグレードアップのように思えますが券売機等の機能を維持・継続させるための費用として修繕費で処理することになります。
 
②補助金の活用
 新札発行に伴うレジや自動券売機などの入れ替えコストを少しでも抑えるためには補助金や助成金の利用も考えておきましょう。該当する補助金としては「中小企業省力化投資補助金」や「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」が考えられます。
 
③都市伝説?
 先ほど新札発行の目的はにせ札防止等が理由だとお話ししましたが、裏の理由として、「脱税でため込んだ現金のあぶり出し」、という理由もあると聞いたことがあります。脱税でためた巨額の現金を隠し持っていた人は、紙幣が新札に変更されてしまうと、少額ならともかく多額に使用すると目立ってしまいます。銀行に交換しに行くにも何億という額では不振に思われ、少額を頻繁に交換するにも厄介な作業となります。結局一度に多額を使用することもできず、足がつく事を恐れて結局捨ててしまうのだそうです。何年か前に竹藪から数億円が発見された事がありました。その時もその筋のお金ではないかと囁かれていたそうですが真相はいかに。
 
 最後までお読みいただきありがとうございました。

2024年5月号

『ギャンブルと税金について』

 
 ギャンブル依存症という事が世間を賑わせておりましたが、そんなギャンブルも小遣いの範囲で楽しむ分には気分転換や明日への活力になると思います。今月はそんなギャンブルで一発あててしまったら税金はどうなるのかお話ししていきたいと思います。
 
 ①日本の公営ギャンブル
 1.競馬 競輪 競艇 オートレース ・・・・・公営競技
 2.宝くじ ロト・TOTO ・・・・・・・・・・・・・・・公営くじ
 ※ちなみにパチンコは三店方式という方法をとっているためギャンブルと扱われておりません。
 
 ②競馬・競輪・競艇・オートレースの税金
 ①-1.の競馬 競輪等で儲けた利益は所得税法では原則一時所得に該当します。しかし例外的に、競馬等で生計を立てるほどの馬券の購入を継続的に行なっており、かつ、その事実を証明する記録(収支金額等)が残している場合には雑所得に該当します。ただし過去の判例からみて雑所得として認められるにはかなりハードルが高いと言えます。では一時所得と雑所得の計算例を比べてみましょう。
 
 具体例  年間の馬券の払戻金の合計額     1,000万円
      年間の当たり馬券の購入費の合計額    10万円
      年間のはずれ馬券の購入費の合計額  1,500万円
 一時所得の場合            
            (1,000万-10万-50万)×1/2=470万円 課税対象額
 雑所得の場合
      (1,000万-10万-1,500万)=△510万円 ∴課税されない
 ※はずれ馬券は一時所得では経費にならないが、雑所得では経費になる。
 
 ③宝くじの当せん金の税金
 ①-2.の宝くじ等の当せん金額は非課税とされていて全額受け取ることが出来ます。宝くじの購入金額の中には既に税金が一部含まれていて公共事業の財源に充てられています。そのため当せん者に税金を課すと二重課税となってしまうため非課税とされています。
 また当せん金の受け取り方について一つ注意しないといけないことがあります。宝くじを他の人と共同買いしたときに代表者が一人で当せん金を受け取りに行き、それをその後、共同購入者に分配した時には代表者から共同購入者への贈与とみなされる危険があります。贈与税の対象にさせないためには、当せん者全員で銀行に受け取りに行き、「宝くじ当せん証明書」を各自発行してもらえば税務署から指摘を受ける事はありません。いらぬ心配かもしれませんが参考までに・・・・・(笑)
 
 最後までお読み頂きありがとうございました。

2024年4月号

『令和6年度税制改正・住宅ローン控除(子育て支援制度)』

 
 今月は小林税理士のメッセージ同様に、令和6年に限定した税制改正項目である住宅ローン控除についてご紹介いたします。今回の住宅ローン控除の改正については子育て世代を対象とした優遇税制となっています。若い夫婦や子育て世代に限って、引き下げ予定であった住宅ローン減税の借入限度額が令和6年も維持されるという改正です。
 

改正のポイント
 
(1) 対象者
 1 年齢40歳未満かつ配偶者を有する個人
 2 年齢40歳以上かつ年齢40歳未満の配偶者を有する個人
 3 年齢19歳未満の扶養親族を有する個人
(2) 対象住宅と居住年月日
 一定の省エネ基準等を満たした住宅(注1)を新築等し、令和6年1月1日から令和6年
 12月31日までに居住の用に供した場合に適用されます。
 (注1) 一定の省エネ基準を満たした住宅等とは
 1 認定住宅…………………認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅
 2 ZEH水準省エネ住宅 ……日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を満たす高い省エネ性能を有する住宅
 3 省エネ基準適合住宅……日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅
 
まとめ
まとめ

2024年3月号

『相続税対策の基本』

 
相続対策とは残された遺族の方々に相続税の納税・相続手続き等の精神的な負担を最小限にしておくことだと思います。具体的な対策としては家族の状況や財産の内容によって異なりますが、一般的な対策としては以下の様に大別できます。
・相続手続き等に関すること
・遺産の分割に関すること
・節税対策と納税対策に関すること
 
① 相続手続き等に関すること
 家族でも亡くなった人の財産を全て把握していることは意外と少ないものです。近年ではネット銀行などで取引される方も多くなっています。その場合遺族の方は通帳や郵送物が無いのですぐに見つけることが出来ません。なのでエンディングノートや遺言に添付する財産目録を作成しておきましょう。また相続手続きには亡くなった人名義の預貯金・有価証券・生命保険などの解約や給付金の申請等、様々な手続きが必要です。どこの証券会社や生命保険会社と取引があったのか、ここでもエンディングノート等を作成しておけばご家族の負担を減らすことが出来ます。
 
② 遺産の分割に関すること
遺言書を作成することにより、遺産をどう分けるかを生前に決めておくことが出来ます。相続人どうしでは話し合いが出来ない、あるいは纏まらないと思われるときにはとても有効です。このように分けて欲しいという気持ちをエンディングノートに書き留めておくという方法もありますが、それを確実に実行してもらうには法的に有効な遺言書でなければなりません。おすすめは公正証書遺言で、公証人や証人といった第三者の立会いのもとで作成しますので、あとから「誰かが強要してかかせた」等の争いになっても有効とされる可能性が高いと言えます。
 
③ 節税対策と納税対策に関すること
相続税額を少なくするためには・相続財産を減らす・相続人の数を増やす・財産の評価額を下げるのいずれかです。
相続財産を減らす対策として有効な手段は生命保険の活用です。被相続人が契約者の死亡保険金には相続人一人当たり500万円の非課税枠があるのと同時に納税資金の準備もできます。相続人を増やす対策としては、被相続人に実子がいなければ2人まで、実子がいる場合でも1人を養子として法定相続人にすることが出来、相続税の基礎控除の額を増やすことが出来ます。財産の評価を下げる一般的な方法として小規模宅地の評価減等があげられます。
相続対策には他にも色々ありますが、準備期間を十分にとった方が節税効果が得られることが多いので早めに税理士に相談されることをお勧めいたします。 最後までお読み頂きありがとうございました。

2024年2月号

『新NISAの概要』

 
 今月のメッセージは年明けから何かと話題となっている新NISAについて触れていきたいと思います。NISAとは少額投資非課税制度ともいい2014年から始まりました。NISA口座を利用して得られた株や投資信託等の運用益については本来約20%の税金が課税されますが、それが非課税とされる制度の事です。
 
①改正に至った背景
 現在個人が所有している金融資産のうち大半が現金預金で所有していると言われています。政府としては現金預金を動かし金融市場を活性化させ、経済成長や雇用の増加に繋げる狙いと、従来のNISA口座の開設数が日本の総人口のわずか9%ほどであったということからもっとNISAを活用して将来にむけて資産を増やして下さい、という思いがあるようです。
 
②新旧比較
※つみたてNISAがつみたて投資枠へ 一般NISAが成長投資枠へ変更となったイメージです。

・非課税期間 旧NISAには非課税期間に期限がありましたが無期限に改正されました。それにより配当金についてはずっと非課税で受け取ることが可能になりました。
・年間投資限度額 新NISAでは積立投資枠が120万円、成長投資枠で240万円に増額され、なお新NISAでは併用が出来るため最大360万円まで投資が可能となりました。
・生涯非課税限度額 非課税保有限度額が合わせて1800万まで拡大。成長投資枠の生涯限度額は1200万までですが、つみたて投資枠のみなら1800万まで積立が可能です。
・売却枠の再利用 従来のNISAでは一度使用した非課税枠の再利用はできませんでしたが、新NISAでは売却して空いた枠は非課税枠として再利用が可能となりました。(枠の復活は翌年以降になる)
 
 新NISAに改正されメリットが増えましたが、あくまでも投資である点については留意しておきましょう。今月は新NISAの概要について触れましたが、機会があれば次回以降で続編をお伝え出来ればと思います。

2024年1月号

『税法が改正されるまでのプロセス』

 新年あけましておめでとうございます。本年も皆様方にとってすばらしい一年になりますよう、MBCの職員一同心よりお祈り申しあげます。
 昨年の岸田総理は増税メガネなどと揶揄されておりましたが、今月は税法を改正するにはどのようなプロセスを経て行われるのかを見ていきたいと思います。
 
税法が改正されるまでの流れ
①各省庁から税制改正要望の提出
 毎年8月末までに様々な業界団体、税理士会や各省庁が次年度以降の税制について改正してもらいたい項目を要望書として提出します。
 
②政府税制調査会での議論(9月~10月)
 提出された要望書は、各界の代表者や学識経験者等から構成される政府の税制調査会で中長期的視点から「税制の在り方」が検討されます。
 
③与党税制調査会での議論(11月~12月上旬)
 政府の税制調査会で中長期的視点から税制の在り方を検討する一方で、毎年度の具体的な税制改正事項は与党税制調査会が税制改正要望等の審議をします。そして審議の結果、税制改正大綱に最も近い形の最終処理案が作成されます。
 
④与党による「税制改正大綱」が発表される(12月中旬)
 税制改正大綱は法案の原案となる重要なもので税制調査会を中心に改革案を検討しまとめたものです。大綱をみれば税制改正の内容がおおよそ分かります。
 
⑤政府による「税制改正の大綱」が発表される(12月下旬)
 与党の税制改正大綱を踏まえて税制改正の大綱が閣議に提出されます。閣議とは総理官邸の閣議室で開催される内閣総理大臣と国務大臣による会議の事で、そこで決定された税制改正の大綱と予算案を基に法案が作成されます。
 
⑥税制改正法律案を国会に提出(翌年1月から4月)
 閣議決定された税制改正の大綱に沿って国税の改正法案については財務省が、地方税の改正法案については総務省が作成し国会に提出されます。
国会では、衆議院と参議院のうち、まず先に改正法案が提出された議院において、財務金融委員会(衆議院)若しくは財政金融委員会(参議院)又は総務委員会での審議を経て本会議に付されます。可決されるともう一方の議院に送付され、そこでも同様のプロセスによって可決されると改正法案は成立し、改正法に定められた日から施行されることになります。※1
 
  ※1 出典:財務省「身近な税について調べる」

バックナンバー