税理士からのメッセージ
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税理士 小林 康志2024年
12月号
11月号 税務調査の白・黒・グレー 10月号 税務調査 9月号 付加価値とは 7月号 心理的安全性とぬるま湯体質 6月号 経営理念について 5月号 令和6年定額減税について 2 4月号 令和6年定額減税について 1 2月号 2025年問題 1月号 「税金」とは
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MBC合同会計ニュース
2024年12月号
税務調査における事実と解釈
税務調査では経営者あるいは経理担当者(以下、経営者と記載します)と調査官の間にすれ違いが生ずることがあります。これは、経営者の「解釈」と調査官の「解釈」の違いから生じます。極端ですが、「事実は1つ。解釈は無数にある」からと言ってよいでしょう。
例えば、確定申告で所得が10万円少なかったとします。これは変えようがない事実です。経営者は計算ミスによって所得がもれたと「解釈」すると思います。しかし調査官は税金が減ると知りながら意図的にもらしたと「解釈」します。これにより調査では、経営者の「解釈」が正しいということを証明するために証拠書類などを見せなければなりません。
もう1つ例を挙げると、調査官は自分の「常識」に基づいて解釈をすることがあります。「10万円も所得のもれがあるなんて随分と高額ですね・・・」という発言をします。しかし10万円が高額かは調査官の常識に基づいた「解釈」です。経営者にとっては、10万円が高額だとは思わないかもしれないからです。
つまり相手には相手の常識に基づく解釈があり、経営者には経営者の常識に基づく解釈があります。このことをしっかりと認識する必要があります。事実は1つなのですから争っても仕方ありません。「解釈」について経営者は「私は〇〇〇と解釈しています」と理由を説明し理解を求める必要があります。
そのために重要なことは税務調査の連絡がきた後に行う「事前準備」をしっかり行うことです。
1つしかない「事実」をどう「解釈」するか、明確に準備をしておく必要があります。
2024年11月号
税務調査の白・黒・グレー
税務調査では、納税者に質問をするなどの「証拠資料の収集」、納税者が行った取引(売上の計上や経費の計上)に法律を当てはめる「要件事実の認定」、そして最後に「法令の解釈の適用」が行われます。問題なのはこの「法令の解釈の適用」です。ここに、白・黒・グレーの3つがあります。
1. 税務調査の白
税務上何も問題のないものです。税務調査でこの白ゾーンに何か言ってきたら、どの法令を根拠に指摘するのかと毅然とした態度で対応しましょう。
2.税務調査の黒
税務上、問題となる部分であり、脱税と判断されますので厳しい処分がなされます。ここで論点となるのは「隠ぺい仮そう行為」かどうかです。納税額が減ることを意図して売り上げを少なくしたり、経費を水増ししたりという不正行為があれば、重加算税というペナルティが課され、本来納める税額の約2倍弱の金額を納付することになります。
さらに脱税額が1億円を超えると、査察や刑事事件になる可能性があります。
3.税務調査のグレー
法律の形式上は問題なくても「法律の解釈」「立法趣旨」で黒にもなるし白にもなるのがグレーです。よく出てくる例ですが、本屋さんで「立ち読み禁止」という貼り紙があります。それなら「座って読むのは良いのか」言うと、張り紙通りなら問題はありませんが、本屋さんの立場からすると「本をタダで読むな」という意図があります。これと同じように税法の解釈にも幅があります。飲食代、消耗品、交際費などがグレーになることが多いです。税務調査で調査官と交渉になるのが最も多いのがこのグレーゾーンです。このグレーゾーンですが背景には「法律」があります。基本的には法律の解釈や判例を持ち出さなければなりません。さらに法律を解釈するには、その法律ができた目的「立法趣旨」を知る必要もあります。経営者の方々が立法趣旨までマスターする必要はありませんが、税務調査のお知らせが来たら、立法趣旨に照らしてグレー部分の対策を考える必要があります。
MBC合同会計ニュース
2024年10月号
税務調査
税務調査。いつ聞いてもこの言葉は世の中の経営者を不安にします。
当然、ほとんどの経営者は悪質な脱税行為はしていません。
それでも「何かあるかもしれない」という不安、「あら捜しをされているような気になる」何とも言えない嫌な気分。
そして、「調査が長引いて、会社の業務に支障をきたすのではないか」という不安感。誰にとっても時間は有限です。経営者にとってはなおさらでしょう。
そもそも、税務調査は何のために行われるのでしょうか。
皆様すでにご存じの通り、日本国憲法には「法律の定めるところによる納税の義務」があります。国税(法人税・所得税・消費税など)は基本的に申告納税方式という、納税者自身が自分(自社)の税額を計算して納税する方法がとられています。すべての人や法人に対して公平に課税するためには、正しい申告がなされているかチェックすることが必要となってきます。ですから税務調査が行われます。誤った申告や納税をしている人から正しい税額を徴収しなければ、きちんと納税している人に対して公平感が保てなくなります。申告納税方式と税務調査は、車の両輪のようなもので、セットで日本の税制は動いています。
税務調査はマイナス面ばかりではありません。従業員にコンプライアンスの意識を根付かせるなど経営に活かせる面もあります。また税務調査をうまく活用する会社は黒字を続けている会社がほとんどです。利益が出て黒字になるのはお客様への貢献、従業員や会社に対しての貢献、そして納税は社会に対する貢献です。利益を上げて、手取りを増やし、会社へ、顧客へ、社会へ貢献できる経営者こそ、真の成功する経営者であると思います。
2024年9月号
付加価値とは
「付加価値のある商品を提供する」「付加価値の高いサービス(あるいは情報)を提供する」。仕事をしているとよく聞く言葉です。では付加価値とはいったいどんなものをいうのでしょうか。
調べてみたところ、「商品やサービスが本来持っている価値に、プラスして付け加えられた価値のこと」とありました。さらに広辞苑によれば「生産過程で新たに付け加えられた価値。売上高から原材料費や減価償却費を差し引いたもの」あるいは「商品やサービスで、他の同種のものにはない価値」と定義されています。これらの定義から見ると商品やサービスの「本来の価値」に上乗せされた何かであることが分かります。そうなると「本来の価値」を理解しないと付加価値への理解は深まりそうにありません。
「価値」とはお客様がこの商品やサービスには価値があると感じること、あるいは価値があると決めることです。つまり価値の有る無しはお客様が決めることです。お客様に価値を提供できているかの判断に、自分の仕事はお客様に買いたいという意思決定をしてもらっているか、買った後に本当に使ってもらっているか、本当に役に立っているか、を常に問うてみることが重要です。当然ですが先ずは買いたいという意思決定が無ければその先の使ってもらうや役に立つはありません。それは価値のないもの=ムダと言っても良いでしょう。売り手は「どうしたら売れるだろうか?」と考えがちです。逆に「なぜお客様は買ってくれるのだろうか?」といったお客様主体の発想から考えると大事なことが見えてきそうです。
ここまで見てきたように「価値のある商品やサービスの提供」だけでも大変なことと思いますが、付加価値とは価値のあるものに更なる価値を付加しなければならないことになります。そうすると付加価値はお客様のニーズが源にあると結論づけることができると思います。ニーズにはお客様自身がよくわかっている顕在ニーズとお客様自身がハッキリと気づいていない潜在ニーズがあります。自身でもハッキリとわかっていない潜在ニーズを徹底的にかつ的確に捉え、顕在ニーズだけでなく潜在ニーズを叶える事こそ付加価値のある仕事であり、お客様に感動を与え他社との差別化が図れると思います。つまり「価値>支払うお金」の関係が出来上がる事です。そのためにはお客様に直接お会いして話を聞き、潜在ニーズの宝庫である現場をよく観察してお客様も気づいていない潜在ニーズを探り当てることが付加価値のある仕事への第一歩であると思います。
2024年8月号
価格転嫁(値上げ)の注意点について
世界的なコロナ禍からの回復やロシアによるウクライナ侵攻などが原因で原材料価格や物流価格の上昇が始まり、物価高が続いております。最近では円安も悪影響を及ぼしているようです。賃金上昇が物価上昇を上回れば良いインフレと言えますが、現状をどのように感じていらっしゃいますでしょうか。
個人のお客様を相手にする事業であれば、例えば食料品や生活必需品が値上がりした場合でも買うか買わないかは別として、一定の顧客数や購入量は確保しやすい面があると思います。
一方で、事業者間での値上げ交渉はなかなか難しいようです。特に中小企業では「仕入値は高いまま、売値は低い水準で抑えられている」というところが多そうです。そして最低賃金引上げの検討も始まっており、価格転嫁が十分でない中小企業にとっては経営に影響を与えそうです。
そうなると原材料費や人件費の高騰を吸収するための価格転嫁が必要となります。お客様との継続的な取引を考えると値上げの打診はマイナス影響の懸念もあり踏み出しにくいと思いますが「値上げ要請を受け入れざるを得ない」納得合意を目標に、下記の2つの取り組みを行うことが重要です。
1 「値上げの合理的理由を伝える」
先方に納得感を得てもらうための根拠を示します。企業努力だけでは吸収が難しいこと、便乗値上げではないことを伝えます。
- ①業界全体で値上がりしていることを示す
- 自社に限らず業界全体として事業環境が値上げ・値上がり局面にあることを伝えます。私共の業界のことで恐縮ですが、税理士事務所業界では消費税のインボイス制度の開始により、ほとんどの会計事務所が事務負担の上昇による値上げをお願いしているようです。
- ②値上げ幅の妥当性をコスト分解して示す
- 「この部分は企業努力で吸収しますが、この上昇分はご了承願います」など、コストを隠さず開示し「それなら仕方がない」という交渉の流れを作ります。
2 「自社の優位性と自社から購入する必然性を伝える」
自社の製品・サービスの優位性を日頃から先方に伝達している企業ほど価格反映が進む傾向にあるようです。たとえ優位性があったとしても伝達が十分でなければお客様へ反映されにくいです。優位性へのお客様の理解が深まれば自社からの購入の必然性が生まれやすくなり交渉がまとまりやすくなります。日頃のコミュニケーションが重要と言えるでしょう。
値上げ交渉は難しいと思いますが、上記を踏まえて誠実に、かつ地道に取り組んでいくしかないであろうと思います。
2024年7月号
心理的安全性とぬるま湯体質
誰もが社内の風通しがよく、業績も上がる企業を目指すのではないかと思います。社内の風通しが良いという事は心理的安全性が高いという事です。心理的安全性とは「全員が気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」と定義できます。心理的安全性が高い組織の特徴として
1.コミュニケーションが良くとれる
2.貢献意欲(モチベーション)が高い
3.共通目標を持っている
という事があげられます。
1~3を従業員の方々が持てるように工夫するのが経営者の役割です。
しかしながら心理的安全性が高いだけで良いという事ではありません。
下の図をご覧ください。心理的安全性が高くても責任感が低ければその組織はぬるま湯体質であると言えます。
ぬるま湯体質の特徴として
1.成果を上げても上げなくても安定した給料が受け取れる
2.頑張った人も頑張らない人も評価・収入が同じで業績に対する意識が低い
3.したがってモチベーションが低く、成長意欲が乏しい
4.居心地の良さを維持するために周囲との対立を避ける
という事などが挙げられます。
ぬるま湯体質から脱却する方法としては先ずリーダー教育から始め、従業員がミーティングなどで自分は関係ないという無責任な状態から、一人一人が自分事として責任感を持つようにすることです。どう思う?どうしたい?どうありたい?と従業員に問いかけ、自分事として考えるようにする方法が効果的だと思います。
2024年6月号
経営理念について
税務・会計を通じ社会に貢献する
MBCの社員及び関係する人々に仕事を通じ情報・利益の還元をする
上記2行が我々税理士法人MBC合同会計の経営理念です。
この経営理念は、MBC合同会計の創業者の故峰岸幸夫税理士が作り上げたものです。
峰岸税理士が引退し、白井税理士と今年の3月で引退した中山元税理士により多少の変更を経て、上記の経営理念が完成しました。
経営理念とは、
経営者が持つ基本的な考え方や価値観を言語化したもの
企業の文化や価値観を伝え社内の一体感を作り出すもの
従業員だけではなく顧客にも企業の姿勢や信念を伝える役割を果たすものです。
経営理念は会社をより良い方向に変えるための基本原則です。そのため経営理念の浸透と実践が経営における最上位の概念となります。マーケティングの施策、経営戦略の施策、人事制度を整えるなど全て経営理念の浸透と実践が必要です。そのためには、本当に伝えたいことを伝わるレベルで言語化する必要があります。
経営理念は過去に経営者が作ったものです。これは会社のミッション(使命)と言っても良いと思います。そして未来の会社のありたい姿を表すのがビジョン(目標)です。これは経営陣がわが社は将来こういう風な会社でありたいという事を言語化します。そのために現在に何を大切にするかを表すのがバリュー(価値感・行動指針)です。これは会社としてどのような価値を大切にするか、業績を拡大するために従業員が遂行すべき行動とはどういうものかを、働く人全員で言語化します。ミッション・ビジョン・バリューは過去・未来・現在と時間軸で考えることができます。
企業が展開する個々の施策は、結局のところ「やるか・やらないか」です。従業員の方々が「やりたくない」と思ったらそこで終わりです。従業員の方々に「やりたい」と思ってもらうことが必要です。そのためには「やり方」ではなく「あり方」を考えることが重要です。自分達はどんな組織でありたいか、どんな姿勢で仕事をするかを問い直し、組織全体で共有することが成果を上げるためには不可欠です。
2024年5月号
令和6年定額減税について 2
春の前に夏が来たような日があったり、翌日には冬に逆戻りしたように気温が下がったりと、年々体調管理が難しくなっているような気がします。
先月の税理士メッセージでは令和6年の定額減税についてお伝えいたしました。
先月のおさらいですが、定額減税は令和6年6月1日以後に最初に支払う給与など(賞与の支給の方が早ければ賞与)に対する源泉徴収税額から、その時点の定額減税額を控除するという方法をとります。つまり、その人の定額減税額に達するまで給与など(賞与も含みます)から所得税を天引きしないで支給することで減税を行います。もし6月の1か月だけで減税額に達しなければ、翌月以降順次所得税の天引きを行わないで給与などを支給することになります。
今月お伝えする新たなポイントとしては、最終的には年末調整を行う際に、年末調整時点での定額減税額に基づき精算を行うという事です。年末調整の際に同一生計の配偶者とか扶養家族についての書類を会社に提出してもらいますが、年末調整時点での配偶者の収入や扶養家族の人数で定額減税額を確定させて6月1日以後の定額減税額との精算を行います。給料計算を行う方にはかなり負担がかかる減税制度です。
以下、給料所得以外の所得に係る定額減税について簡単に触れます。
1⃣事業所得や不動産所得などに係るもの
①令和6年分の第1期分予定納税額から本人分(3万円)の減税額を控除します。
第1期分で減税しきれない場合は第2期分予定納税額からも減税額を控除します。
②事業所得者などで確定申告を行う人については、令和6年分の確定申告の際に計算された所得税額から定額減税額を控除します。
2⃣ 公的年金等の受給者の場合
令和6年6月以降の公的年金等の源泉徴収税額から減税分を控除し、6月に減税しきれなかった金額については、それ以後の年金から順次控除します(給与の方法とほぼ同じです)が、最終的な定額減税額の計算は確定申告によって受けることになります。
なお、年末調整の際の詳しい内容は、令和6年9月頃に国税庁のホームページに掲載される予定です。
2024年4月号
令和6年定額減税について 1
令和6年の税制改正により、令和6年に限定して所得税・個人住民税の定額減税が行われる予定です。今月からこの定額減税についてお伝えします。
【1】減税(特別控除)される金額
減税(特別控除)の額は次の金額の合計額です。
①所得税 本人3万円+同一生計配偶者又は扶養親族×3万円
②住民税 本人1万円+同一生計配偶者又は扶養親族×1万円
具体例 例えば配偶者と子(扶養親族)1名の場合
所得税:3万円+2名(配偶者、子)×3万円=9万円
住民税:1万円+2名(配偶者、子)×1万円=3万円
所得税9万円+住民税3万円=合計12万円の減税
【2】減税(特別控除)の時期と方法
給与所得者の場合
①所得税
令和6年6月1日以後に最初に支払われる給料(最初に支払われるのが賞与の場合には賞与)の所得税の天引き額から、その人の特別控除額の金額を控除します。6月の給与で控除しきれない部分は、その後に支払いを受ける給与の源泉徴収税額から順次控除されます。
具体例:その人の減税額が3万円で、毎月の天引きされる所得税が5千円である人の場合
6月は天引きされる所得税が0円で、これにより5千円が減税されたことになります。減税額の残りの2万5千円は7月以後の給与から11月まで毎月5千円減税され合計3万円の減税が完了します。
②住民税
令和6年6月分の住民税は給料から天引きされず、その人の定額減税後の住民税額を令和6年7月分から令和7年5月分の11ヶ月で割り算した税額を給料から天引きします(割り切れない時の端数は7月分で調整し、残りの10ヶ月は毎月同じ税額を天引きすることになります)。
結論として、給与所得者は減税により毎月の手取りが少し増えることになります。
今月は紙面の都合上、以上で終了です。来月以降で個人事業主の減税はどうなるか等、別の情報をお伝えしたいと思います。
2024年3月号
土地を売却して相続税の納税資金を確保する際の注意点
相続税の申告・納税をしなければならないにも関わらず、まれに納税資金が不足することがあります。遺産に占める現預金や換金しやすい株式などの割合が低く、土地が多い場合などが想定されます。相続税は現金一括納付が原則で、現金一括納付が困難な場合には延納(税金の分割払い)、延納も無理な場合には物納(税務署が換金しやすい物に限ります)という制度があります。延納や物納は申請が煩雑なのでお薦めいたしません。
あるお客様が土地をたくさん相続したのでどうしても納税資金が不足してしまう為、金融機関で借入をして納税をし、相続した土地のうちの2筆の土地を売却し、売却が出来たら借入金を返済するという計画を立てました。予定通りに事が運び、無事納税は完了しましたが、ここである落とし穴が・・・。
相続税法は相続財産の評価額を課税時期(財産の所有者が亡くなった日)の時価で評価しなさいと定めています。時価とは、不特定多数の人が売り買いをする一般的な市場で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である、と説明しています。
上記の落とし穴は、土地の面積が登記簿より広かったという事実が測量によって判明したという事です。いわゆる縄伸びしていた状態です。土地を売却するときには必ず測量を行い、面積や隣地との境界線の確認を行います。当初の申告は登記簿に土地の面積が約500㎡と記載されていたため、その面積で相続税評価をいたしました。申告書の提出後に測量図が完成し、測量図を確認したところ面積はなんと約600㎡以上でした。面積が大きくなれば土地の相続税評価額、つまり時価が増加し、結果、納付すべき相続税額も増額となり修正申告書の提出が必要となってしまいました。当然土地の売却代金も正しい面積をもとに決められたと思います。
土地を売却して納税資金を作ろうと考える場合には、どの土地を売却するかを早めに決めて、測量が終わって正しい最新の面積を用いて申告書を作成することが重要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2024年2月号
2025年問題
2024年2月になりました。いよいよ確定申告がスタートし、我々会計事務所業界は繁忙期に入ります。全職員一丸となってこの時期を乗り切りたいと思います。早目の資料回収のご協力など、何卒宜しくお願い致します。
さて、2025年問題。一度はお聞きになったことがありますでしょうか。
1947年から1950年ごろに生まれた第一次ベビーブーム、いわゆる「団塊の世代」とひとくくりにされた年代の方々が全員、後期高齢者になる年です。
日本の少子高齢化は世界に類を見ないスピードで進んでいるようです。
我々のような中小企業にとっても2025年問題は大きな問題を抱えることになります。社長の高齢化が進み世代交代、つまり後継者への引継ぎをどう考えるかが大切になってきます。これは高齢でも現役で頑張っていらっしゃる社長のみならず、若手の社長にも自分の将来のこととしてご一緒に考えていただきたい問題です。
ある調査によると現在の経営者の平均引退年齢はだいたい70歳だそうです。しかしながら日本国内の中小企業の1/4は70歳以上の方が経営者として頑張っています。経済産業省が行った試算によると2025年には約245万社の経営者が70歳以上になり、そのうち約半数の127万社が後継者不在により廃業の危機に瀕していると言います。しかも後継者不在による廃業のうち約半数は黒字にもかかわらず廃業することになると予想されているそうです。経済的な損失と雇用の喪失は大きな社会問題となるでしょう。
では、この危機の逃れるためにはどんな方法が考えられるでしょうか。
後継者への引継ぎ方法は大きく分けて以下の3つになると考えます。
①親族内承継・・・ご家族の中から後継者を選ぶ方法です。
②親族外承継・・・現役員・従業員など中から後継者を選ぶ方法です。
③M&A・・・合併や事業譲渡などの方法です。
これらの方法は会社の株の譲渡の際の資金をどのようにして準備するか、贈与の場合の贈与税の負担をどうするか等、解決しなければならないことが非常に多くあります。是非慎重にお考え下さい。もちろんMBC合同会計はご協力させていただきます。
2024年1月号
「税金」とは
新年あけましておめでとうございます。
昨年はひとかたならぬご支援を賜り厚く御礼申し上げます。
本年が皆様にとって良い1年となることを心より祈念いたします。
さて、毎年恒例の京都清水寺で発表される今年の漢字一字、昨年は「税」でした。あの大きな和紙に向かって特大の筆で清水寺の住職・森清範(もりせいはん)さんが書く姿が印象的ですね。税金を払わないと思われてる住職が「税」と書くのもなんだかおもしろいです(ちなみに全く税金を払わないという事ではなく一部が免除されているだけです)。
昨年の10月から消費税のインボイス制度が始まって皆様が大変な苦労をしたことや、将来の有事に向けた防衛費を賄うための増税案、所得税や住民税を減税すると公表したにも関わらず内閣支持率が下がるなどの世相を反映していたと思います。
日本の憲法には「税」とはこういうものである、という文言はありません。しかし、全103条ある憲法のうち税金に関する記載は2つもあります。簡単に表現すると「国民には納税の義務がある」という事と「税金は法律で規定された通りに課税される」というものです。まれな例としてドイツには「税」とはこういうものであるという成文化されたものがあります。ドイツ租税基本法は「租税とは、特別の給付に対する反対給付ではなく、法律が給付義務とそれに結び付けている要件に該当するすべての者に対し、収入を得るために公法上の団体が課する金銭給付」と定義してます。なんだか分かりにくいです。
憲法に2つもあると表現したのは、憲法ではかなり広範囲の規定があるにも関わらず「税」に関してだけで2つ条文があるという事にその重要性が表れている気がするからです。
消費税インボイス制度の開始により、皆様の税に対する関心が高まったように感じます。今後も税や経営に関する情報をお届けしていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。