税理士からのメッセージ
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税理士 小林 康志2023年 12月号 『生前贈与』のルールが変わる4 11月号 『生前贈与』のルールが変わる3 10月号 いよいよインボイス制度が始まりました 9月号 『生前贈与』のルールが変わる2 8月号 『生前贈与』のルールが変わる 5月号 非課税となる特例の使い方 4月号 経営者の情報収集 2月号 消費税の改正について No.2 1月号 年頭に当たって
【翌年へ】
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2023年12月号
『生前贈与』のルールが変わる 4
生前贈与には「暦年贈与(年間110万円までは課税されない贈与制度)」と「相続時精算課税制度」 の2種類があります。前回までの生前贈与のルール変更は暦年贈与についてお伝えしてきました。今回は 「相続時精算課税制度」のルール変更についてお伝えします。
1.そもそも相続時精算課税制度とは
① 累積2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。
② 累積2,500万円を超えると一律20%の税率で贈与税を計算します。
③ 相続時精算課税制度を利用することを税務署に届け出る必要があります。届出後の贈与は全て税務署に申告します。
④一度届出をすると相続時精算課税制度を取り消すことはできません。
⑤ 贈与者(財産をあげた人)が死亡した場合は、相続時精算課税制度を利用して贈与をした 財産の贈与時の金額を、その死亡した人の相続財産に加算して相続税を計算します。
⑥ 20%の税率で贈与税を納付していた場合には、算出された相続税から納付していた贈与税を差引いて納付すべき相続税額を計算します。
2.この制度を使える人
① 贈与者(財産をあげる人)
贈与をした年の1月1日に60歳以上の人です。
②受贈者(財産をもらう人)
贈与をした人の直系卑属(子や孫など)である推定相続人及び孫のうち、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上である人です。
3.大きなルール変更
① 贈与を受けた財産が土地や建物で、相続税の申告期限までに災害により損害を受けた場合は、相続時に資産価値の再計算ができます。この制度は令和6年1月1日以後の災害により損害を受けた場合に利用できます。株価が大暴落した時等には残念ながらこの制度は使えません。
② 相続時精算課税制度を選択すれば、2,500万円の特別控除枠の他に、毎年総額110万円までの贈与には贈与税も相続税も課税されなくなります。つまり年110万円までの贈与を相続財産に加算しません。この制度は令和6年1月1日以後の贈与で利用できます。
今回のルール変更により暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらが有利になるか判定が難しくなりました。ご不明な点はMBCの担当者・税理士にお尋ねください。
2023年11月号
『生前贈与』のルールが変わる 3
※生前贈与のルール変更の対処方法
令和6年1月1日以降の生前贈与は経過措置期間を設けて、相続財産に加算される期間が現在の3年間から7年間に変更になります。生前贈与をお考えの場合には是非令和5年のうちに贈与をする事をお勧めいたします。もちろん令和6年以降の贈与であっても、贈与日から7年を超えて長生きすれば節税の効果はありますが、かなり難易度(という表現が適切かどうか分かりませんが)は上がったと言えるでしょう。
生前に贈与した財産の価額が相続財産に加算される期間が3年から7年に延びますが、8年前の贈与は加算の対象になりません。ですから自分がいつまで生きられるかを考えて7年より前から贈与を行えば良いということになります。
厚生労働省の発表によると日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳だそうです(令和3年調べによる)。60歳での平均余命は男性が約24年、女性が約30年だそうです。このことから60歳まで生きた人に限って平均をみれば男性は85歳、女性は90歳ぐらいまで生きられることになります。その7年前というと男性は70代後半、女性は80代前半ということになりますので、暦年贈与をするのであれば男性は70代前半、女性は70代後半当たりで生前贈与を考えると良いかもしれません。もちろんもっと早くから贈与をした方が節税効果は高いですが、あまりに早い時期から贈与をしてしまうと、ご自身の老後の生活資金が足りなくなってしまう恐れがありますので慎重に考えてみましょう。なお、上記の年齢はあくまでも平均ですので誰にでも当てはまるものではない、参考程度であることをご承知おきください。
贈与の相手は法定相続人に限らず、つまり自分の子供だけではなく例えば孫、子供の配偶者、甥や姪などに贈与するのも一つの方法です。贈与をした人が7年以内に亡くなったとしても相続によって遺産を引き継いだ人にしか生前贈与の加算はありません。相続人以外の人にした生前贈与は贈与をして贈与税が発生したら贈与税を払って終わりです。
3か月連続で「生前贈与のルールが変わる」をお伝えする予定でしたが前月は急遽内容を変更してしまい、1か月挟んでのメッセージになってしまいました。
生前贈与のルール変更は複雑です。不明点は遠慮なくお問い合わせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
2023年10月号
いよいよインボイス制度が始まりました
インボイス制度とは正式には【適格請求書等保存方式】と言い、発行した側と受領した側が同じ適格請求書を保存しなければなりません。
適格請求書とは、次の①から⑥の事項が記載された書類(請求書、納品書、領収書、レシートなど)をいいます。(以下、国税庁インボイスQ&Aより)
① 適格請求書発行事業者の氏名又は 名称(会社名など)と 登録番号(アルファベットのTから始まる13桁の数字)
②商品などの売却・外注などの役務の提供・物の貸付(リース取引等)などの取引を行った 年月日
③上記②の内容(どんな商品の売却か・どの現場の外注か・どんな物の貸付かが分かるように記載すること。なお軽減税率8%の食料品などの場合は軽減税率対象であることが分かるように記載すること)
④請求金額の税抜価格又は税込価格を 税率ごとに区分して合計した金額と 適用税率(10%か8%)
⑤税率ごとに区分した 消費税額
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(請求の相手先です)
上記の記載例を参考に、漏れなく必要事項が記載されているか確認してみて下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
2023年9月号
『生前贈与』のルールが変わる 2
※相続財産加算期間はいきなり7年に変わるわけではない
前月お伝えしました通り、生前贈与のルール変更には経過措置が講じられています。結論から申し上げますと、加算期間が3年からいきなり7年に延長されることはありません。
今月は相続発生日のタイミングから見た新ルールについてお伝えします。
相続発生日とは被相続人が亡くなった日のことです。贈与の日付は自分で決めることができますが、相続発生日や相続発生の順番などは誰にも分かりません。だからこそ、相続発生日になってから慌てることが無いように前もって確認することが大切です。
どの税金でも経過措置はかなり複雑になっているのが通例です。今回のルール変更は相続発生日をもとにして以下の通り3つの期間に分けて考えると分かりやすいと思います。
◎令和8年12月31日までに相続が発生した(亡くなった)場合
⇒ 従来通りの「3年ルール」に従う
3年前の当該日(亡くなった日付)以降の贈与を、相続財産に加算する
◎令和9年1月1日~令和12年12月31日に相続があった場合
⇒ この期間が経過措置です。
この場合、亡くなった日にかかわらず令和6年1月1日以降の贈与を、相続財産に加算する
◎令和13年1月1日以降に相続があった場合
⇒ 新制度の「7年ルール」に従う
7年前の当該日(亡くなった日付)以降の贈与を、相続財産に加算する
上記の通り、贈与税のルールが変わる令和6年~令和13年の相続については、どのタイミングで相続が発生するかで、どこまでの生前贈与が相続財産に加算されるかが変わってきます。つまり令和6年になってから贈与した財産は令和14年になってようやく加算対象から除かれることになります。では、どう対処すればよいかは来月の税理士メッセージでお伝えします。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
2023年8月号
『生前贈与』のルールが変わる
生前贈与は相続財産の金額を減らして相続税の節税をする「相続対策の王道」として知られています。
政府はここ数年この生前贈与の見直しについて検討してきましたが、令和6年1月1日以降の生前贈与から新しいルールになることが決まりました。
一番大きな変更点は、「暦年贈与」の相続財産への加算期間が、相続発生前の3年から7年に延長されたことです。
暦年贈与とは、贈与があった年の1月1日から12月31日の1年間に行われた贈与金額が110万円以下なら贈与税がかからない(年間110万円を超えると贈与税を納税しなければなりません)というものです。この暦年贈与を利用して相続財産を年々減らしていく方法が、節税対策の1つです。
これまでは3年以内の贈与は相続財産に加算され相続税の計算をしていましたが、7年以内の贈与が加算されるということは実質的には増税と考えられます。
では、なぜこのような改正が行われるのかを考えてみましょう。
多くの資産家は、生前贈与という方法を利用して相続財産を減らし相続税の節税を行ってきました。しかし政府内では財産を移転する時期によって税額が変わるのは不公平であるから、相続税と贈与税を一体化して中立的な税制にすべきだという議論が起こっていました。
贈与税は1年間という期間を区切って課税し、年間110万円を超える場合は贈与税を納めてしまえば、その贈与した金額は相続税の課税対象額から除かれます。ただし、亡くなる直前に贈与をして相続税逃れをする事を防止するため、亡くなる直前3年以内の贈与は遡って相続財産に加算して相続税を計算する制度があります。この制度は、相続財産に戻して合算することから「持ち戻し」と呼ばれています。
今回の改正ではこの持ち戻し期間が3年から7年に延長されました。したがって、早く贈与を開始して、贈与をした人が長生きをすれば、暦年贈与のメリットはこれまで通り十分にあります。新しい7年加算ルールは令和6年1月1日以降からの贈与に適用されるので、今年の年末までの贈与であれば従来の3年加算のルールが適用されます。
今回の改正は実質的には増税となりますが、いきなり4年も延長するという不意打ちみたいな改正になってしまうことは避けられるよう、経過措置が講じられております。経過措置については来月の税理士メッセージでお伝えします。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
2023年7月号
何をインボイスとするか【買い手編】
消費税のインボイス制度開始まであと3か月となります。今月は買い手側の立場での準備についてご案内いたします。(先月同様、消費税免税事業者やインボイス登録番号が不要な方には関係の無い内容です。申し訳ありません。)
【買い手としての準備】
□ 自社の仕入れ・経費についてインボイスが必要な取引か検討しましょう。
〇 継続的でない一度きりの取引、少額な取引についても原則としてインボイスの保存が消費税額の計算上必要な要件となります。
〇 3万円未満の公共交通機関や従業員に支払う日当や出張旅費、通勤手当などインボイスの保存が不要となる特例もあります。
□ 継続的な取引については、仕入先から受け取る請求書等が記載事項を満たしているか確認し、必要に応じて仕入先とも相談しましょう。
〇 仕入先がインボイス発行事業者の登録を受けるかどうか事前に確認しましょう。
〇 何がインボイスとなるかについて、仕入先との間で認識を統一しておくことが重要です。
□ 受け取った請求書等をどのように保存・管理するか検討しましょう。
〇 請求書を、登録番号の有る無しで区分して管理することが重要です。
〇 免税事業者に払った消費税の経過措置(80%・50%控除)の摘要を受けるには区分記載請求書(税率と税額が記載された請求書やレシートなど)の保存が必要です。
〇 電子帳簿保存法のスキャナ保存も検討しましょう。
□ 帳簿への記載方法を検討しましょう。
〇 インボイス制度開始後も帳簿の記載事項は変わりません。
〇 インボイス不要の特例や免税事業者からの仕入に係る経過措置の摘要を受ける場合、その旨の記載が必要です。
□ 簡易課税制度を適用するかを確認しましょう。
〇 簡易課税制度を選択している場合、インボイスの保存は必要条件とはなりませんが、請求書や領収書はきちんと保管しておきましょう。
〇 簡易課税と原則課税のどちらが消費税の納税の負担が少ないか検討する必要があります。
詳しくは担当者や税理士とよく相談して下さい。
2023年6月号
何をインボイスとするか 【売り手編】
令和5年10月1日から消費税のインボイス制度が始まります。早目早目の準備が必要です。標題の通り、わが社は何をもってインボイスとするかを決めなければなりません。売り手側の立場でのインボイスは何にするか、買い手側の立場では何の書類をもらえば良いのか、この2つを明確にしておきましょう。今月は売り手としての準備についてご案内いたします。(免税事業者やインボイス登録番号が不要な方には関係の無い内容です。申し訳ありません。)
【売り手としての準備】
□ 交付している請求書等をどう見直せばインボイスになるか検討しましょう。
〇 インボイスには、登録番号・適用税率・消費税額等の記載が必要です。
〇 消費税額に1円未満の端数が生じたときは、「1インボイスあたり税率(8%・10%)ごとに1回」
端数処理を行うことになります。
〇 何の書類をインボイスにするか、郵送・手渡し・メール添付などの交付方法、システム改修など
も含めて考えましょう。
□ 取引ごとにどのような書類を交付しているか確認しましょう。
〇 雑収入等も含め、売上先が事業者である取引から、インボイスの交付が求められるか確認しましょう。
〇 インボイスは、必要な項目が記載されていれば請求書、領収書などの名称は問いません。
また、電子データでの提供や、手書きでの交付も可能です。
〇 都度「納品書」の交付、月締め「請求書」の交付、レシート・手書き領収書の交付がある場合、インボイスの要件を満たす方法を確認しましょう。
□ 売上先に登録を受けた旨やインボイスの交付方法などを連絡しましょう。
〇 登録を受けた旨や何をインボイスとするか、交付方法などについて、売上先と認識を共有することが円滑な準備にとって重要です。わが社が準備を行っていると伝えれば、継続的な取引関係のある売上先の安心につながると考えられます。
□ インボイスの写しの保存方法を検討しましょう。
〇 写しの保存は、コピーに限られません。電子データや複写式の控え、ジャーナルなども認められます。
詳しくは担当者や税理士とよく相談して下さい。
2023年5月号
非課税となる特例の使い方
先日、弊社とお付き合いのある司法書士の先生から電話がありました。あるお客様からご自宅の登記の依頼を受けたそうですが、どうやら家の購入代金の一部をそのお客様のお父様が負担されていたそうです。贈与が行われたのは令和3年、金額は400万円ほどだったのですが、住宅取得資金の贈与税の非課税枠の範囲内なのでお金をもらってそのまま何もしなくて良いと判断しているらしいから詳しい話を聞いてあげてほしいと、その司法書士の先生から依頼の電話でした。
結論として令和5年の3月頃、令和3年分の贈与税の申告書を提出し三十数万円の税金を納めていただきました(年110万円以下の贈与なら問題なかったのですが)。この後、無申告加算税と延滞税のお知らせを納税者の方に送りますと税務署から連絡があり、罰金のような追徴課税を受けることになります。本来であれば令和4年3月15日までに申告書を提出しなければならなかった贈与でした。
確かに「住宅取得資金等の贈与税の特例」「教育資金の一括贈与」「結婚・子育て資金の一括贈与」などの一定の限度額までは非課税となる特例はあります。しかしながら何の手続きもせずに特例を受けることは出来ません。
上記の特例の手続きについてひとつずつ確認しましょう。
「住宅取得資金等の贈与税の特例」
申告要件:この規定の適用を受けることを記載した贈与税の申告書を申告期限内に所轄税務署長に提出していること
「教育資金の一括贈与」
申告要件:教育資金非課税申告書を金融機関を経由して所轄税務署長に提出しなければならない
「結婚・子育て資金の一括贈与」
申告要件:結婚・子育て資金非課税申告書を金融機関を経由して所轄税務署長に提出しなければならない
上記の特例は金銭をあげる人ともらう人の関係やそれぞれの年齢など様々な条件がありますが、共通しているのは「非課税となる特例を利用します」という申告書を税務署に提出しなければ非課税にはならないということです。
2023年4月号
経営者の情報収集
4月になりました。確定申告も無事に終わりホッとしております。皆様におかれましては担当者への早目の資料のご提出などご協力いただきありがとうございました。当事務所の担当者の立場になってみると、いかに早く・漏れなく資料を回収するかが会社の決算や確定申告の早期終了・見直し時間の確保によるミスの防止・疑問点に対する質問などの情報収集のポイントとなります。
経営者の情報収集についても大切なポイントがあります。下記のポイントが皆様の参考になれば幸いです。
1.情報は自ら集める
経営者は常に難しい意思決定をしなければなりません。そのため色々な情報を収集し分析する必要があります。経営者の情報収集については、自分の意思決定に必要な情報は何かを明確にすることが大切です。
2.経営者が集めるべき情報とは
経営者が集めるべき情報は以下の4つに分類することができます。
① 自社の事業に直接関わる情報です。売上や利益などの業績情報、主要な顧客との取引状況、新規顧客の開拓状況、自社製品やサービスに関する情報、競合他社に関する情報などです。これらの情報は経営者が常に最新情報を把握することを通してご自身で最適な判断が下せる状態にしておく必要があります。
②現在行っている事業の周辺事業の情報です。この情報を収集することにより、周辺事業を展開している他の企業が自社事業分野に参入してくる可能性を分析することができます。
③世の中の全般に関するビジネス情報です。ヒット商品や新しい仕事の分野、成長あるいは衰退分野の情報、景気や金利の状況、成長企業の事例、最新技術の情報などがあります。これらの情報は新聞やネット、ビジネス紙などから入手できると考えられます。
④一見自社の仕事には関係ないと思われる情報です。人口構成や世界情勢、若者や高齢者の消費行動・気候変動などの幅広い情報です。これらの情報にも関心を払い、自社ビジネスにつながる可能性が有ると感じた場合はさらに掘り下げて情報収集してみましょう。
3.最後に
少子高齢化による社会保障負担の増加や災害の増加といった日本独自の問題、地球規模では温暖化や軍事力強化など様々な問題を抱えております。これら問題をどのように解決すべきかの問いの中にもビジネスチャンスはあると思います。
2023年3月号
インボイス制度の緩和措置などについて
2月の税理士メッセージで橋本税理士とともにお伝えした消費税のインボイス制度の緩和措置についてお伝えします。
1⃣ 納付税額の軽減
消費税の納付税額を売上にくっついてきた消費税の2割とする。
①事例
売上 700万円(消費税70万円)※サービス業を例とします。
経費 150万円(消費税15万円)
▶ 原則計算の場合 70万円-15万円=55万円 ← 納付消費税
▶ 簡易課税の場合 70万円-35万円=35万円 ← 納付消費税
(簡易課税の-35万円=70万円×50%で計算)
※簡易課税の計算方法につきましては担当者又は税理士にご確認ください。
▶ 納付税額の軽減 70万円×2割=14万円 ← 納付消費税
②条件
上記①の軽減計算ができる法人・個人事業主は消費税の免税事業者からインボイス発行事業者になった方です。つまり法人の場合は2期前、個人事業主の場合は2年前の課税売上(消費税がかかる売上)が1,000万円以下などの要件を満たす方です。
また、事前の届出は不要で、申告時にどうするか選択できます。
③適用期間
法人・・・令和5年10月1日~令和8年9月30日を含む事業年度
個人・・・令和5年10月~12月の申告から令和8年分の申告まで
2⃣ 値引きインボイス
値引き(消費税法では「売上に対する対価の返還」と言います)の場合でも値引き税抜価格と値引き消費税額のためのインボイスが必要でしたが税込値引き金額が1万円未満の場合は値引きインボイスは免除されます。
3⃣ インボイスの登録申請
先月の税理士メッセージには令和5年3月31日が登録期限と記載しましたが令和5年4月以降でも登録可能となります。令和5年9月30日までに登録申請すれば令和5年10月1日からインボイス発行事業者になれます。
4⃣ 最後に
閣議決定された税制改正(案)の消費税インボイス制度に係る見直しの中に「その他所要の措置を講ずる。」と記載がありますので、今後も更なる変更や特例が出てくる可能性があります。
2023年2月号
消費税の改正について No.2
(橋本税理士のメッセージの後にお読みください)
1.インボイス制度の概要
インボイスとは、売り手が買い手に対して、正確な税率(10%・8%)や消費税額を伝える手段です。簡単に言いますと単なる「請求書」ですがこの請求書(「適格請求書」といいます。)への記載内容が下記のように決められています。
①インボイス発行事業者の氏名又は名称と登録番号
②商品を売った年月日・サービス提供をした年月日・物を貸した年月日
③上記②の商品やサービスの内容(軽減税率の対象にはその旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)と摘要税率
⑤税率ごとに区分した消費税額
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
※アンダーラインは請求書などの記載事項に追加される項目です。
2.インボイスの登録番号を申請しないとどうなるか
適格請求書には必ず上記1. ①の登録番号を記載しなければなりません。申請をしなければ登録番号は発行されないので買い手側では橋本税理士のメッセージに記載された仕入税額控除ができなくなります。つまり売上にくっついてきた消費税から仕入れなどで払った消費税をマイナスすることができず、極端に表現すると売り上げにくっついてきた消費税を全額納税しなければならなくなります。しかしこれでは消費税分の値引きや取引先をインボイス発行事業者に変更するなど売り手側が不利益を被ることが考えられます。そこで買い手側にはR5年10月1日から3年間は払った消費税の80%を、R8年10月1日から3年間は50%を売上にくっついてきた消費税から差し引いて良いという6年間の経過措置があります。
3.今後どうすれば良いか
①現在課税事業者の方(消費税を納税している事業者)
(ア)なるべく早めにインボイス登録番号を申請し適格請求書発行事業者になることをお勧めします。その上で売り手先に発行事業者・登録番号を通知したほうが取引上の摩擦が起きないと思います。
(イ)買い手側の立場として支払先の登録状況を把握しましょう。支払先が免税事業者を継続するのであれば取引の継続や消費税の扱いについて妥協点を見出すことも必要です。
②現在免税事業者の方(消費税を納税していない事業者)
(ア)売上先とインボイスに関する協議をしましょう。協議では様々な経過措置も織り込み、長期的視野を含めて合意できないか協議しましょう。
(イ)売上先が課税事業者であればインボイス発行事業者の登録を検討しましょう(この場合消費税の納税義務者になります)。この場合橋本税理士のメッセージでお伝えした原則計算にするか簡易課税にするか検討する必要があります。
最後に・・・昨年12月に発表された税制改正大綱においてインボイスについてさらなる緩和措置や経過措置が閣議決定されました。これらの内容は何らかの手段で皆様にお伝えしていきます。
2023年1月号
年頭に当たって
明けましておめでとうございます。
白井・中山両税理士からお送りしていた「税理士メッセージ」を本年より橋本税理士とともにお送りすることになりました税理士の小林です。
何卒よろしくお願い申し上げます。
さて年頭に当たって、しかも初めての「税理士メッセージ」。何を皆様にお伝えしようか・・・と悩んだ結果、やはり自己紹介をしようと思います。
とは言いましても私の個人的なことではなく、私ども税理士の職務とは何かということをお伝えしたいと思います。
①税務に関する専門家である
これは当たり前のことですが、単に税法だけではなく民法や会社法、農地法、労働法などを理解し、納税者である皆様を援助することができる専門家であるべきと考えられています。
②独立した公正な立場に立つ
税理士はお客様との契約を基本としながらも課税庁(国税庁や税務署のことです)あるいは納税義務者のいずれにも偏ることのない「独立した公正な立場」で業務を行う事が求められております。これにより納税者の信頼に応え、課税庁からは税理士の立場が尊重され、結果として納税義務者の正当な権益を擁護する(納税者を守る)ことができます。
③申告納税制度の理念
日本では自分あるいは自社の税金は自分で計算し納税することを原則とする「申告納税制度」が採用されています。しかしながら税法は難解で複雑であり、納税者が間違った解釈をすることにより過大に税金を納めたり、過少な納税により不利益を被ることが有るかもしれません。適正に納税額を計算し納税者を援助するために税理士制度は設けられています。
少々堅苦しい内容になってしまいましたが下記の税理士法第1条(税理士の使命)を常に念頭に置き、税理士として皆様のお役に立ちたいと思います。
「税理士法第1条(税理士の使命)
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」